2019 年 40 巻 p. 339-349
学習指導要領の法的拘束力や強制性は,教職課程コアカリキュラムと教職課程認定によって大学における教科の教職関連授業にまで及ぶようになっている。このような現況にあって,学習指導要領を教育課程の基準性から原理的に遡って検討した。そこでは,憲法上の要請としての補完性の原理をもとに,国際比較における日本の学習指導要領の位置付けが中央統制的であること。文部科学省(行政府)は学習指導要領の法的拘束力や基準性を主張しているが,最高裁(司法府)は大綱的基準,衆議院憲法調査会事務局(立法府)は指導・助言的基準として解釈しているという三権間の相違を明らかにした。その上で,学習指導要領の図画工作と美術の分析を行い,内面介入の問題,教育方法に関する記述の細目化の問題,造形性によらない同時代のアートやデザインがスポイルされている問題を指摘した。