抄録
生徒が絵の主題をいかに把握するのか,さらにその価値判断をどのように行うのか。とくに 鑑賞能力を基準としてそれとの関わり方,という観点から究明する。能力高位者は鑑賞するに 際して「モチーフ・情景」や「抽象化画面」に着目し,それらから主題を把握したりそれを拠 り所として価値判断をしたりするなど,感性的に活動した。その事実から逆算し,生徒の美的 体験を充実させるための道筋が見えてきた。指導方法として考えられるのは,一連の授業を通 して「モチーフ・情景」や「抽象化画面」に興味・関心をもたせ,それを端緒として彼らの感 性を揺さぶることである。 また文化依存性の高い作品を鑑賞する場合における,指導のガイドラインも得られた。文化 依存的な知識を前提として作品を鑑賞すると,諸能力が絡み合い相乗効果を発揮する。知性の 裏付けを受けて違和感が解消される仕方で,再び感性が活性化する。その働きによって,中身 の濃い物語として受け容れられるなど,高度なレベルで作品の真価が味わわれるのである。