美術教育学:美術科教育学会誌
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41 巻
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  • 2020 年 41 巻 p. App1-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
  • 2020 年 41 巻 p. Cover1-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
  • 2020 年 41 巻 p. i-iii
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
  • 縣 拓充
    2020 年 41 巻 p. 1-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,美術や美術教育の中で,同じ「つくる・描く」活動を指して用いられる「表現」と「創造」という二つの言葉について,それぞれが本来的に意味するものや両者の差異を明確化することを試みた。検討の結果,表現は動物が他個体に何かを訴えようとする「コミュニケーション」として捉えられること,他方の創造は,個人が楽しみながら新しい刺激や環境を探索する,「遊び」の延長上にあるものとして捉えられることが分かった。本論文では,このように表現と創造の体験をそれぞれコミュニケーションと遊びに起源をもつものとして位置付けた上で,両者を企図した教育実践をデザインする上での要件を検討した。合わせて,いずれの学びも,表現や創造と鑑賞/模倣との間の連環の中で深まっていくことを確認した。
  • 有田 洋子
    2020 年 41 巻 p. 17-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    和歌山大学の美術教育学の制度的成立過程の三段階を解明した。第一段階:和歌山師範学校から和歌山大学学芸学部へ美術教官はほぼ移行し,美術教育関係授業は招聘した著名な作家以外の教官で分担された。多くの大学と同様,美術科教育専門教官はいなかった。第二段階:文部省と激しい折衝後,昭和39年2月学科目省令発足時の同大学美術関係学科目は絵画と彫塑となった。昭和47年5月に美術科教育の学科目が増設され,教官定員も純増となり,同年12月に美術教育学専門家が採用された。学科目定員と人員及びその研究内容が整合した。ただ大学側に美術教育学の認識は明確ではなかった。第三段階:平成3年に美術科教育学科目にもう一名が採用された。平成5年4月の大学院教育学研究科及び同美術教育専修の設置で同大学の美術教育学の制度的基盤は成立した。
  • 大島 賢一
    2020 年 41 巻 p. 33-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,1915(大正4)年に開催された長野県内小学校聯合教科研究会図画手工研究会の報告書である『長野県内小学校聯合教科研究会図画手工研究録』を手掛かりに,当時の長野県における教育的図画受容について以下のことを明らかにした。当時,本研究会に参加した長野県の美術教育の主導的教師たちの多くは,教育的図画や『新定画帖』について,その心理的配列の工夫や一般陶冶としての美感育成の重要性など一定程度の理解を示しながら,実践者としてその不備についても指摘していた。しかし,多くの教師たちは教育的図画や『新定画帖』が用意した議論フレームから逸脱することのない議論を行なっていた。そのような中で『白樺』によって美術文化に触れた白樺教師たちは独自の美術理解から自由画教育などを先取りするような美術教育論を展開していた。
  • 岡田 匡史
    2020 年 41 巻 p. 45-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では受胎告知を主題に据え,受胎告知画(聖告図)の鑑賞題材化を巡る多角的検討を展開すると共に,開発題材を提起する。その際,イタリア絵画を鑑賞対象に選ぶが,時期的にはこれまで集中的に扱ってきたルネサンス期よりも遡る,後期ゴシック期を取り上げ,場所的にはフィレンツェ等と比べやや外縁的位置付けとなるシエナに焦点を絞り,画家はその地で活躍し,国際的影響力を発揮して国際ゴシック様式の開花に貢献し,日本でも知名度が高いシエナ派の代表格,シモーネ・マルティーニを選定した。作品は黄金背景に天使とマリアが対峙する「受胎告知(1333年)」である。本作の読解基調の鑑賞学習を効果的に進めるため,学習要素を熟慮し,計10段階で成る学習プログラムを設計した。本稿では,その内,第5項目までを述べ,第6項目以降は続篇に譲る。
  • アートプロジェクトに参加した子どものインタビュー分析を通して
    梶原 千恵
    2020 年 41 巻 p. 57-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は2011年3月に発生した東日本大震災の直後に学校で行われたアートプロジェクトを分析・考察し,アートプロジェクトの美術教育的な意義を明らかにすることを目的としている。分析の対象は宮城県の学校教員が行った2つのアートプロジェクト〈東松島(宮戸)復興プロジェクトC(チルドレン)〉,〈表札プロジェクト〉である。これらを比較して共通点と違いを明らかにし,さらに〈表札プロジェクト〉参加者インタビューを実施しKJ法で分析した。その結果,前者が「(子どもたちの)心のケア」であることがわかった。後者が「震災全体を受容するための仕掛けとしてのアートプロジェクト」であり,その場合生徒は癒しの対象ではなく,主体的な学習者となることができた。
  • 片桐 彩
    2020 年 41 巻 p. 69-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,協働学習に基づいた映像メディア表現の教育的効果に関して,高校生の社会的目標及び自己肯定感に関する質問紙調査を行うと共に,筆者の先の研究において示された調査結果と併せて分析し,協働によるモバイルムービーの授業実践の教育的効果を総合的に検証することを目的とした。因子分析の結果,社会的目標においては2因子構造が,自己肯定感においては5因子構造が得られた。先の研究で示された教育的効果の4因子と,生徒が認知する達成目標・社会的目標・自己肯定感との関係を調査した。相関分析の結果,協働によるモバイルムービーの教育的効果を高めるためには,マスタリー目標志向性,向社会性,規範遵守性,自己表現力,充実感を高めることが有効であることが実証され,本研究結果と社会情動的スキルとの関連が示唆された。
  • 参照源の構造,及び学習者間交換
    金子 一夫
    2020 年 41 巻 p. 85-96
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    贈与交換システム論的美術教育学構築のため,1.贈与交換サイクルの基本図式,2.参照源の構造,3.学習者間の贈与交換図式の解明をした。1.では,従来の著者設定図式に要素「美的理念」を加えてよりシステム全体を表現する基本図式へ改訂した。2.では,要素の出自や入力過程を基にした領域構成よりも参照過程すなわち出力構造の解明が適切とし,その構造を認知科学の作業記憶実行領域と長期記憶の概念によって分析し,美術教育全体での基本的贈与交換,作業記憶実行領域での仮想的贈与交換,参照源の参照過程での垂直的贈与交換という三つの贈与交換サイクル複合構造を解明した。3.では,「話し合い」のような明示的学習者間交換以前に他の学習者存在そのものが学習者間交換をもたらすことを指摘し,学習者間交換及び学習者集団内交換の図式を提案した。
  • 鎌田 純平
    2020 年 41 巻 p. 97-110
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,美術教育における中学生の表現主題の創出並びに変容の一実態と考えられる要因について,考察することを目的としている。工芸分野の題材で実践を行い,発想・構想過程の最初の段階にキーワードで漠然とした主題を言語化させ,それを基として主題確定化へと至らそうとした。最初のキーワードが確定した主題までそのまま残るのかどうかを,アンケート調査及び生徒のワークシートから検証した結果,キーワードの変化する生徒が約7割であるとわかった。また,キーワードの変化する割合が大きいほど,作品に対する充足感は低下しがちであることが明らかとなった。その要因として,言葉と造形化のイメージに乖離がある生徒ほど主題が大きく変わりやすく,その結果造形的なイメージを深めることに注力できなくなる傾向があることを示した。
  • 「粘土製作」概念内容と歴史的意義についての一考察
    神谷 睦代
    2020 年 41 巻 p. 111-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,倉橋惣三の「粘土製作-幼兒の生活(二)-」(雑誌『幼兒の教育』掲載)及びその関連文献により,倉橋の粘土造形教育観について分析・考察を行った。結果,幼児の生活を軸とする倉橋の幼児教育観を基盤としつつ,当時の細工・作業的な「手技」への批判がその根底にあることが明らかになった。また,倉橋の粘土造形教育観を表す「粘土製作」概念の内容には,当時の児童中心主義的な造形活動を推進することに加えて,「芸術教育」(「児童芸術」)という観点も含まれていることが,文中の「原始芸術家」「造型製作」という用語から浮き彫りになった。以上の二点が倉橋の粘土造形教育観の主な特質・先進性と捉えられるが,これらには倉橋の美術界の新たな動向に対する鋭敏な芸術的感性が影響していると考えられる。
  • よりよい人間関係の構築によるカリキュラムマネジメントの推進
    金城 満, 永山 智子
    2020 年 41 巻 p. 127-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,教職員間のコミュニケーション不足からくる組織的な課題に対して,よりよい人間関係の構築を図るための,マグネットスペース設置に関する実践報告である。設置にはカリキュラムマネジメントの指針を取り入れ,「人」に焦点を当て,共同作業を通しての自然な対話から全校的な協力体制を築いていった。実践結果のアンケート調査からは,仕事のしやすさ,職場内の相互支援,安心できる職場のしくみ,メンタル面等に対して,好評価があった。また,マグネットスペースでの気軽な交流の積み重ねが,情報共有の場としても機能し,日頃の生徒の変化にも早目に気づける支援体制の充実にも繋がると期待できる。
  • 観念的思考と現実的思考の表れ
    小口 あや
    2020 年 41 巻 p. 141-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,美術鑑賞時において小学校1年生と大学生が作品から何を感受するのか,それはどのような思考によってなされるのかについて明らかにするものである。研究は,小学校1年生と大学生に行った記述式の鑑賞アンケートで得た情報を分析して行った。アンケートは,作品の感受内容を作品の任意の場所に記述するものである。こうして収集した記述内容と記述場所の傾向を数値化し,小学校3・4年生と中学生の同様の調査と比較した。その結果,小学校1年生は作品内容の感受を作品の内側へ記述することが多く,しかも約4割の児童が自分の分身を作中に描き込んでおり,強い観念的思考が見受けられた。一方,大学生は感受内容や記述場所に極端な偏りは見られず,観念的思考も現実的思考も必要に応じて用いて鑑賞していると見られる。
  • 手の巧緻性の観点から
    佐藤 寛子
    2020 年 41 巻 p. 155-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
     ハサミの使い方における手の巧緻性は,握力や母指の安定と関係がある。母指中手指節(MP)関節過伸展症では,母指の屈筋が働かず,保持する握力が十分に発揮されないことがある。また,過伸展状態では随意に基節を動かしにくく,母指が不安定となることがある。  一方,医学領域では,先天性の母指MP関節過伸展症重度罹患幼児の症例が報告されている。そこで,幼児のハサミの使用状況を観察したところ,軽度の母指MP関節過伸展症が疑われる幼児を認めた。そして,罹患幼児3名の母指の状況を運動方向や関節の動き,力点場所の観点から分析し,軽度罹患幼児がハサミを使用する際の援助・指導法の導出を試みた。  その結果,ハサミの母指側の指穴が基節骨の付け根まで到達しないサイズであること,ハサミ使用時はIP関節を屈曲するよう指導することを見出した。
  • 美術館と連携した「Answer Art」の実践を通して
    更科 結希
    2020 年 41 巻 p. 167-179
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,美術館と連携し,表現と鑑賞を一体化した題材による中学校美術科の授業の可能性を探った。表現と鑑賞の一体化の事例や美術館と学校の連携の在り方,協働学習について先行事例をもとにそれらの現状と課題を整理し,一つの題材の中で表現と鑑賞を一体化した授業の在り方について研究の方向性を見いだした。その上で,表現と鑑賞が相互に補完し合う題材「AnswerArt」を開発・実践し,検証した。その結果,一体化を生むためには,主題や作品を中心に据え,表現と鑑賞の活動が相互補完的に循環する題材の構造化が必要であることを見いだした。また,こうした題材の発表の場を学校外に位置づけたことにより,生徒が生活や社会の中における表現の意味を考える機会を生み出した。
  • 図画工作科と美術専門教育を結ぶ基礎課程を考える
    鷹木 朗
    2020 年 41 巻 p. 181-197
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本稿は美術科教員養成課程における教科専門教育,特にデザイン基礎教育が直面する課題を検討し,そこに図画工作科教育,とりわけ造形遊びの実践における課題と共通する問題点を見出し,その解決への方途を模索するものである。まず,芸術学部における教職課程で行った授業[デザイン基礎演習]の実践を報告する。そして,工業化社会から高度情報化社会へと変貌しつつある今日の世界で,デザインの,ひいては20世紀以降の美術全般がその立脚点としていた「人間の身体が物質と出会うところに発生する出来事としての造形行為」という‘表現のかたち’も変容しつつあることを観察し,人と人,人と社会の関係をもその表現に含み込んだ新しい美術行為の‘かたち’について考え,初等教育から専門教育に通底する,次代に向けた基礎課程の可能性を示す。
  • テプフェールの「観相学試論」から学習漫画へ
    髙林 未央
    2020 年 41 巻 p. 199-211
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,美術教育における漫画の扱い方について,観相学を応用したキャラクター造形を軸として検討し,提案するものである。  はじめに,美術教育における漫画の立ち位置を確認し,これまでの研究を振り返り,成果と課題を確認した。  次に,テプフェールの『観相学試論』を読み解き,現代のキャラクター造形にもその思考が生きていることを確認した。そして学習マンガの中により顕著にキャラクター造形手法が使われていることを,学習マンガの人物描写から明らかにした。  最後に,キャラクター造形手法から学校教育への展開として,ロマン主義の絵の読み解き,マンガのリテラシー,社会科歴史分野との接点の計3種類の応用方法について提案した。
  • 多胡 宏, 茂木 一司
    2020 年 41 巻 p. 213-224
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    盲児への色彩教育の必要性について指摘する意見は少なくない。しかしながら,先行研究はほとんど見当たらない。本研究は,盲学校の美術科教育における色彩教育の現状を調査し,その意義や意味を明らかにし,色彩教材・題材を開発する過程を示し,最終的にはカリキュラムのスタンダード化を目ざす。視覚障害児が生活の中で生きた色彩を使えるために,色への興味関心を高め,言葉と関連させてイメージを豊かにし,色相環や三属性,色彩の感情効果などの色彩理論を理解し,自分なりのイメージや好みを形成するための題材・教材開発から支援カリキュラムを考える。障害をもつこどものための研究は結果的に美術科教育全体をわかりやすくすることにつながる。
  • カンディンスキー作『小さな喜び』の鑑賞(中学 3 年生)を題材として
    立原 慶一
    2020 年 41 巻 p. 225-236
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    生徒が絵の主題をいかに把握するのか,さらにその価値判断をどのように行うのか。とくに 鑑賞能力を基準としてそれとの関わり方,という観点から究明する。能力高位者は鑑賞するに 際して「モチーフ・情景」や「抽象化画面」に着目し,それらから主題を把握したりそれを拠 り所として価値判断をしたりするなど,感性的に活動した。その事実から逆算し,生徒の美的 体験を充実させるための道筋が見えてきた。指導方法として考えられるのは,一連の授業を通 して「モチーフ・情景」や「抽象化画面」に興味・関心をもたせ,それを端緒として彼らの感 性を揺さぶることである。 また文化依存性の高い作品を鑑賞する場合における,指導のガイドラインも得られた。文化 依存的な知識を前提として作品を鑑賞すると,諸能力が絡み合い相乗効果を発揮する。知性の 裏付けを受けて違和感が解消される仕方で,再び感性が活性化する。その働きによって,中身 の濃い物語として受け容れられるなど,高度なレベルで作品の真価が味わわれるのである。
  • 保育実践「楽しかった思い出の絵」の事例検証から
    辻 大地
    2020 年 41 巻 p. 237-248
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,認定こども園の3・4歳児クラスを対象にした「楽しかった思い出の絵」の保育実践を参与観察して,その実態を明らかにした。その結果,仮説で提示した幼児期前半期にあたる3歳~4歳ころまでは表象能力が目の前の事物に依存しているため,目の前にある形や色,素材などに直接関わることでイメージをふくらませる内容や,今・ここの目の前の出来事として遊べる内容を楽しむ傾向があることが確認された。また幼児期後半期以降にあたる4歳ころ以降は,表象活動が目の前の事物や出来事だけに依存しない言葉で考えることを楽しむ内容や,今・ここの自分とは異なる他者や過去の自分の立場になって考えて描くことを楽しむことが徐々にできることが確認された。
  • 二つの「遊びなおし研修」の比較から
    寺元 幸仁
    2020 年 41 巻 p. 249-260
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    これまで教育現場に「造形遊び」が浸透することをねらい,独自に教師対象の「遊びなおし研修」に取り組み,その効果と課題について研究してきた。本論文では,新たな展開として,子どもが一緒に「遊びなおし研修」に参加することで,参加者である教師にどのような効果が見られるかについて明らかにした。大人と子どもが共に参加する「教師と子ども研修」と大人のみが参加する「教師のみ研修」の事前アンケートやワークシートの自由記述を,KHCoderによって計量テキスト分析を行い,比較・考察した。子どもと活動することで,参加者にとって「自分が遊べたかどうか多角的にとらえる」「自他の『評価』のズレが少なくなる」「日々抱いている不安や疑問をより根源的な課題としてとらえる」の効果があるとの結論を得た。
  • ポーランドにおける日本の様々な技法と材料を用いたワークショップの実践を手掛かりに
    南雲 まき
    2020 年 41 巻 p. 261-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本論では,ポーランドにおけるワークショップの実践を手掛かりに,美術による異文化間のコミュニケーションの可能性について考察を行う。ポーランドと日本の間での異文化理解の推進を目的として,日本の技法や材料を用いて制作を行うワークショップを行った結果,様々な国からポーランドに移住した人々が参加し,ともに制作を行い,結果的に多様な文化的背景をもつ人々の相互の文化理解を推進する場となった。本論では,活動を振り返り,検証を通して,美術活動が,多様な文化的背景をもつ人々の相互理解に有効であることを論証する。また,多文化共生社会化が進む日本における,美術を通した異文化理解の可能性についても論じる。
  • 「どうしてそう思う?」との比較から
    平野 智紀, 鈴木 有紀
    2020 年 41 巻 p. 275-284
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,対話型鑑賞のファシリテーションにおける「どこからそう思う?」という問いかけの意味について,「どうしてそう思う?」と比較する授業を小学校段階において設計・実践し,データをもとに検証した。教員と児童の発話分析およびふりかえりシートの分析から,「どこからそう思う?」という問いかけにより,子どもたちは作品の表現内容に根拠を求めることができるとともに,教員が子ども同士の発言をつなげてコメントする回数が増え,さらに鑑賞を深めることが可能になっていたことが示唆された。
  • 教科書分析を通じた概念モデルの構築
    布山 タルト
    2020 年 41 巻 p. 285-296
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,図工・美術教育におけるアニメーション題材に含まれる複合的なねらいを整理し,実践者の構造的な理解を助ける概念モデルを構築することである。本稿ではまず現行教科書に掲載されているアニメーション題材を対象とした横断的視点からの内容分析を行い,それらに含まれる教育のねらいを抽出することを試みた。計30件の題材を分析した結果,10のねらいが抽出された。次にそれらをアニメーションを学ぶことを目的としたねらいと,アニメーションを通じて何かを学ぶことを目的としたねらいに分類し,双方をつなぐ概念モデルとして2層構造のモデルを構築した。このモデルは図工・美術におけるアニメーション教育実践のための「地図」として,また授業改善のためのアセスメントツールとしての可能性を持つと考えられる。
  • 制約条件に基づく幼児の応答行為に着目して
    堀田 由加里
    2020 年 41 巻 p. 297-309
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,園での一斉描画活動における幼児同士の応答行為と描画表現の創発過程を制約条件に着目して検討した。5歳児クラスの一斉描画活動を参与観察し,収集した録画データから幼児の応答行為を抽出しボトムアップにカテゴリ化を行った。そのなかで,「創発を促す応答行為」の分析を行った結果,幼児の応答行為の特質は,経験に基づく表現と想像に基づく表現により差異が生じることが示された。さらに,事例分析の結果,制約条件によりイメージの検討が誘発されることで,描画テーマの視点が変化しアイデアが吟味,再構成されるなか,幼児の描画表現が相互に促されることが示された。本研究の知見は,一斉描画活動における設定条件や保育者の関わりの指標となると同時に,幼児同士の関わりから生成される豊かな描画表現へ示唆を与えるものと考える。
  • 牧野 由理
    2020 年 41 巻 p. 311-322
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,印刷出版社である東京造画館の創業者である塚本岩三郎の経歴を明らかにした上で東京造画館の成立過程を探りつつ,目録の分析から東京造画館による掛図の特質を明らかにすることである。その結果,塚本岩三郎は工部美術学校において明治初期の洋画を学び,加えて石版や銅版画の技術を獲得した人物であることが明らかとなった。また東京造画館の掛図目録の分析により,明治42年には1,046枚もの掛図を販売し,理科に関する掛図が最も多いことが示された。東京造画館による掛図は多色石版で細部まで詳細に製作されていたため,子どもが実際に見たことがない異国や戦争の視覚イメージを喚起し,描くために適した教具であった。
  • 松浦 藍
    2020 年 41 巻 p. 323-334
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本論は,色彩から感情効果を感じ取る活動(以下,色彩感情効果学習)と色彩を系統的に理 解する(以下,カラーシステム学習)を経験する順序が生徒の造形活動に与える影響を明らか にするものである。中学校第 1 学年 6 クラスを,3 クラスずつのグループに分け,色彩感情効 果学習とカラーシステム学習の経験順を変えて実施した後,共通の造形活動を行わせた。その 結果,色彩を知識として理解する学習より,色彩から感じ取る学習を先に経験すると,色彩に 変化を持たせて表現する傾向をより強めること。色彩を知識として理解する学習だけでは,主 題からイメージを広げて多様な描き方をしようとする姿勢を涵養させにくい傾向が示されたこ と。色彩からの感じ取りと色彩の知識の双方の学習によって,より多様な方法を用いて,より 豊かにイメージする力を醸成する傾向が強まることが分かった。
  • 矛盾の構築と表現世界の形成過程との関係性
    村田 透
    2020 年 41 巻 p. 335-352
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,「造形遊び」における子どもの論理に基づく探究の仕方を明らかにすることである。そのために「石鹸クリームづくり」の事例を分析・考察をした。  結論は以下5つである。1つ目は,子どもは周りの環境と相互作用して,固有のものやことの意味や,自分のアイデンティティをつくる。2つ目は,子どもの「造形遊び」は多様な特徴(「材料遊び」「操作遊び」「模倣遊び」)がある。3つ目は,子どもは「わからない」状態から「わかる」状態にむけて問題を創出し,価値を吟味する探究を行う。4つ目は,子どもの探究における理解・納得は,自他の文化的価値の受容と創出と表裏一体である。5つ目は,子どもの探究の原動力は矛盾への気付きが関与している。子どもは矛盾を解決する学習行為を通して,新たな論理的概念を形成し,理解・納得する。
  • 吉田 奈穂子
    2020 年 41 巻 p. 353-364
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,シュタイナー学校(SteinerSchulen)の一般的な欧米のカリキュラムを指標にしながら,東アジア地域のシュタイナー学校における授業実践と教師への聞き取り調査をもとに,「ヴァルドルフ教育(Waldorfpädagogik)」という教育論がどのように展開されているのかを,造形教育を中心に明らかにすることである。その際,中国,台湾,韓国,日本のシュタイナー学校を研究対象にした。その結果,ヴァルドルフ教育では,カリキュラムはドグマではなく,教師が自分本位の授業を行わないようにするための資料と捉えられていることを確認するとともに,東アジア地域のシュタイナー学校では,それぞれの文化や伝統,歴史,環境,地域に根づいた造形教育が展開され,欧米とは異なった独自の形で新たに自国のヴァルドルフ教育が生まれつつあることを解明した。
  • 製作と“その他の予備教育”の考察
    和田 学
    2020 年 41 巻 p. 365-376
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,昭和13~15年の戦時体制下における日本の文部省の航空教育政策の考察を行う。その目的は,同省による中学校を対象としたグライダーによる滑空訓練機の操縦と製作を含む訓練,及びその予備教育として国民学校教科書へも導入された模型航空機の製作等の教材の開発過程と,双方の影響関係について明らかにすることにある。本研究の結果,同省の教程開発スタッフの関与の基,昭和14年の東京市小学校高等科1~2年の教程において,飛行機の機種や実験用測定器等の理解を求める教材が模型製作と関連付けられていることが分かった。
  • 2020 年 41 巻 p. 378-379
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 380-382
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 383-384
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 385-387
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 388-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 389-390
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 391-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. 392-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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  • 2020 年 41 巻 p. App2-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/04/01
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