本研究は,高校生を対象とする金属素材を用いた授業を開発実践し,高校生と素材や道具や他の人とが相互作用する学びの形成過程を明らかにすることを目的とした。まず,金属工芸家の橋本真之や彫刻家の多和圭三の語りと,橋本のワークショップから,受講者が素材と方法の関係に専念する造形活動の特性を捉えた。次に,高校生が素材や道具や活動場所を共にする友達等と相互作用する鍛金の授業を,金属素材を金鎚で叩く造形活動,造形物に触れて鑑賞し語り合う活動,地域のI美術館へ搬入し展示公開する活動の行程で実践した。授業実践の分析考察により,活動場所を共有する人と同時に金鎚を使う共感的な身体経験と,自分なりの方法や造形物を一体的につくる造形的自己変革とを生成し,造形物の意味を相互に捉え味わう学びの形成過程を明らかにした。