2021 年 42 巻 p. 83-97
本稿は,同一学年による小学校2 , 4 , 6 年次と,さらに中学校2 ~ 3 年次までの長期に及ぶ造形活動を追い,共通の実践場所(パティオ)に注目して,その空間に関わる彼らの造形活動の変容を跡付けた。特に彼らの造形活動を通した場所・空間への関わり方について比較考察し,その発達段階的な造形的特徴を抽出した。結果として, 2 年の造形遊びでは,周囲とバランスをとる芽生えの段階から, 4 年では自分を取り巻く実用的な空間を協働で生み出し, 6 年ではダイナミックな活動で美的な造形空間につくり変えた。中学校の共同制作では,目的に応じた新しい共有空間を創出した。空間把握において身体的発達に応じた児童・生徒の造形能力の変容過程が確認され,空間に美的に関わる造形能力を育成する教科として,図画工作・美術科の独自な重要性を指摘した。