美術教育学:美術科教育学会誌
Online ISSN : 2424-2497
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42 巻
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  • 2021 年 42 巻 p. Cover1-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. App1-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. i-iii
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • -大学・小学校・美術館が連携した実践から-
    縣 拓充, 神野 真吾
    2021 年 42 巻 p. 1-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,美術館と学校が連携して実施した鑑賞教育プログラムの目標について整理した上で,そのようなプログラムの学習効果を実証的に示すことである。はじめに,学校向けプログラムでは,美術と教育の両者の専門性を活かしながら,「その作品や展覧会の鑑賞を通じて気づかせたいこと・体験させたいこと」を明確にする必要性を確認した。そしてそれらを踏まえて,大学・小学校・美術館が連携し,須田悦弘展を訪れる小学校高学年向けのプログラムをデザインした。教育的効果の検証の結果,参加児童は, 1 )作品を見て,考えたり話をしたりする活動を「楽しい」と捉えるようになっていたこと, 2 )プログラムの中で学んだ鑑賞の視点を他の作品を見る際にも用いていたこと, 3 )日常生活にも活かされる,新しい眼差しを得ていたこと,などが明らかになった。
  • -教育的及び心理学的観点からの議論を中心に-
    新井 哲夫
    2021 年 42 巻 p. 17-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,戦後日本における創造主義美術教育の理論と運動をめぐる議論について考察し,その全体像を明らかにすることである。本研究と筆者のこれまでの創造美育運動に関する研究との関係は,後者が運動を俯瞰的に捉えようとする研究であるのに対して,本研究は運動に関わる個別の問題にフォーカスし,その詳細を明らかにしようとするものである。 研究は文献調査を基本とし,はじめに,久保貞次郎の美術教育論の特色を理論化の過程を遡ることによって明らかにし,その上で,論争を「教育的」「心理学的」「政治的・社会的」「教科論的」「当事者・協力者」の 5 つの観点に整理し,分析した。本稿は,研究全体の前半部分をなすものであり,久保貞次郎の美術教育論の特色と,教育学的及び心理学的観点からの議論の内容・推移を明らかにした。
  • 有田 洋子
    2021 年 42 巻 p. 37-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    岐阜大学の美術教育学の制度的成立過程の三段階を解明した。第一段階:岐阜師範学校から岐阜大学学芸学部へ美術教官はほぼ移行した。美術科教育関係授業は土屋常義が主に担当した。多くの大学と同様,美術科教育専門教官はいなかった。第二段階:昭和39年 2 月学科目省令発足時の同大学美術関係学科目は絵画,彫塑,構成,美術理論・美術史の四つであった。美術科教育の学科目に関しては,昭和40年 3 月に増設され,昭和45年頃に人員配置がなされた。第三段階:平成 7 年 4 月に大学院教育学研究科が設置された。翌平成 8 年 4 月に同美術教育専修が設置され,これにより岐阜大学の美術教育学の制度的基盤は成立した。
  • 池田 吏志
    2021 年 42 巻 p. 51-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,美術教育の国際学会誌で1990年代初頭から2020年の約30年間に公表された障害学と美術教育の複合領域を対象とした論文をレビューし,研究動向と今後の課題を示すことである。『Studies in Art Education』,『International Journal of Art and Design Education』, 『International Journal of Education through Art』の 3 誌に掲載された 7 名の研究者による12 編の論文を対象に,現在行われている教育の何が批判され,どのような理論的方向性が示されているのかを調査した。その結果,論者らは機能制限的,能力主義的な障害観を批判し,ポスト構造主義の戦略をアートに取り入れることで,障害が持つ肯定的/否定的価値観や,統合/ 分離といった二項対立的な構造の再構築や,逆説的な活用を試みていた。本稿は,美術教育の研究者が当該領域の国際的,学際的議論に参入するための基礎的な資料を提供している。 本稿の目的は,美術教育の国際学会誌で1990年代初頭から2020年の約30年間に公表された障害学と美術教育の複合領域を対象とした論文をレビューし,研究動向と今後の課題を示すことである。『Studies in Art Education』,『International Journal of Art and Design Education』, 『International Journal of Education through Art』の 3 誌に掲載された 7 名の研究者による12 編の論文を対象に,現在行われている教育の何が批判され,どのような理論的方向性が示されているのかを調査した。その結果,論者らは機能制限的,能力主義的な障害観を批判し,ポスト構造主義の戦略をアートに取り入れることで,障害が持つ肯定的/否定的価値観や,統合/ 分離といった二項対立的な構造の再構築や,逆説的な活用を試みていた。本稿は,美術教育の研究者が当該領域の国際的,学際的議論に参入するための基礎的な資料を提供している。
  • -地域社会における教育的意義を中心に-
    市川 寛也
    2021 年 42 巻 p. 67-82
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は「ポストミュージアム」の視点から日本におけるアートプロジェクトについて考察したものである。近代的博物館が有形資料の収集を軸としていたのに対して,ポストミュージアムでは無形文化を含む資料の活用が重視される。また,利用者とのコミュニケーションも展示に限らない多様な方法が用いられる。本稿では,その実施形態として「土着型博物館」「エコミュージアム」「アートプロジェクト」を取り上げた。さらに,アートプロジェクトを実践形式に応じて「展覧会形式の事業」「サイト・スペシフィックな野外展示」「コミュニティ・スペシフィックなプロジェクト」に分類した。特に,第三の実践モデルは人と人との対話のプロセスを通して展開されることで,構成主義的な学びが達成される。上記の分類に従い,地域社会と芸術との関係を構造化する視点を示した。
  • -小学校 2 年次から中学校 3 年次までの同一学年の授業を通して-
    蝦名 敦子
    2021 年 42 巻 p. 83-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,同一学年による小学校2 , 4 , 6 年次と,さらに中学校2 ~ 3 年次までの長期に及ぶ造形活動を追い,共通の実践場所(パティオ)に注目して,その空間に関わる彼らの造形活動の変容を跡付けた。特に彼らの造形活動を通した場所・空間への関わり方について比較考察し,その発達段階的な造形的特徴を抽出した。結果として, 2 年の造形遊びでは,周囲とバランスをとる芽生えの段階から, 4 年では自分を取り巻く実用的な空間を協働で生み出し, 6 年ではダイナミックな活動で美的な造形空間につくり変えた。中学校の共同制作では,目的に応じた新しい共有空間を創出した。空間把握において身体的発達に応じた児童・生徒の造形能力の変容過程が確認され,空間に美的に関わる造形能力を育成する教科として,図画工作・美術科の独自な重要性を指摘した。
  • -高校生を対象とした授業の開発実践と分析考察-
    大平 修也, 松本 健義
    2021 年 42 巻 p. 99-118
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,高校生を対象とする金属素材を用いた授業を開発実践し,高校生と素材や道具や他の人とが相互作用する学びの形成過程を明らかにすることを目的とした。まず,金属工芸家の橋本真之や彫刻家の多和圭三の語りと,橋本のワークショップから,受講者が素材と方法の関係に専念する造形活動の特性を捉えた。次に,高校生が素材や道具や活動場所を共にする友達等と相互作用する鍛金の授業を,金属素材を金鎚で叩く造形活動,造形物に触れて鑑賞し語り合う活動,地域のI美術館へ搬入し展示公開する活動の行程で実践した。授業実践の分析考察により,活動場所を共有する人と同時に金鎚を使う共感的な身体経験と,自分なりの方法や造形物を一体的につくる造形的自己変革とを生成し,造形物の意味を相互に捉え味わう学びの形成過程を明らかにした。
  • 片桐 彩
    2021 年 42 巻 p. 119-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,協働による映像メディア表現に関する基礎研究の成果を踏まえ,高等学校の教育現場における授業実践の教育的効果を検証することである。研究対象は,多様な文化的背景をもつ高校生である。指導方針は,集団の中で,個人制作をベースとした協働学習を促進し,生徒個々の多様な特性を生かすことであった。生徒はスライドと短編動画の制作に取り組み,授業と並行して質問紙調査が行われた。量的分析の結果,他者からの触発による創造活動の促進,マスタリー目標志向性,規範遵守性が学習の前後で有意に変化したことが示され,授業には,生徒の学習に対する認知を学習に有利な方向に変化させる効果があったことが実証された。質的分析の結果,映像メディア表現には生徒の自己意識を高める効果があることが示唆された。
  • -美術学習論の克服,贈与交換類型,学習共同体-
    金子 一夫
    2021 年 42 巻 p. 135-146
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    筆者の贈与交換システム論的美術教育学(以下,贈与交換論的美術教育学)の意義を次の四項目で検証した。1 .筆者が美術学習論を贈与交換論的美術教育学へ改訂した意義を再確認し, 新たに教育実践による参照源と教材深化の像を示した。2 .贈与交換システムの四要素間に贈与交換的集団感情が満ちていること,学習者集団内により濃い相互依存的集団感情があることを指摘した。歴史的時空での贈与交換図式の要素を,「歴史・他者・死者」「形象」「現代人」「解釈・創出」とした。3 .齋藤孝の言う,指圧の「受け手」の身体論的構えの四類型を援用して,美術科教育での教師・学習者の贈与交換類型を試みた。4 .学習共同体論と贈与交換論的美術教育学とを比較して,近代社会組織である学校には,共同体論ではなく贈与交換論が適切なことを指摘した。
  • -工芸分野の題材を実践例として-
    鎌田 純平
    2021 年 42 巻 p. 147-163
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿は中学生に,言葉がどのような造形へ置き換えられるのかという関係性を理解させた後に,キーワード(漠然とした主題)を生み出させる指導法が,生徒の作品に対する充足感を向上させるうえで効果的かどうか明らかにすることを目的とする。2017年度に取り組んだ,自分のマークを金属にするという題材と同様の題材において改めて実践を行い,その教育的効果を確認しようとした。生徒のワークシートを分析した結果,言葉がもたらす造形イメージの指導によって,キーワードと造形化のイメージが結びつきやすくなり,生徒の発想・構想は円滑に促されていたことが明らかとなった。また,そのプロセスにおいてマークの原型を早期に考えつき,それを洗練させることに注力するタイプの生徒の割合が,前回と比べて著しく向上していたことがわかった。
  • -学校教育と連携する社会教育施設の実践を中心に-
    甲田 小知代
    2021 年 42 巻 p. 165-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    フィンランドの学校教育における国家カリキュラムに,2004年,初めて「メディア教育」が位置づけられた。その後,2014年の改訂でより強化されてメディア教育の需要は高まっていった。2019年に「MEDIA LUKU TAITO SUOMESSA」(フィンランドのメディアリテラシー)が発効されたことで,国を挙げてメディア教育を推進している。一方,同国では生涯学習の思想に基づいた社会教育施設が充実しており,学校教育の課外活動を中心に幼児教育から成人教育まで幅広い年齢層に教育を提供している。これらの施設は学校教育と連携が図られており,「TAITEEN PERUSOPETUKSEN YLEISEN OPETUSSUUNNITELAN PERUSTEET 2017」(芸術カリキュラム)に基づき,学校教育と連携しながら教育効果を高めている。本論では,これらの映像メディア表現に特化した施設が学校現場における授業実践に幅広く寄与し,美術教育における映像メディア表現の一翼を担い,学校教育の活動の場面を拡張し,特徴づけていることを確認した。
  • -小学校5 年生と中学生を対象とした団扇の鑑賞実践から-
    小口 あや
    2021 年 42 巻 p. 183-196
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,工芸・工作作品や工業製品等を「使う作品」とし,その鑑賞指導方法論について述べたものである。「使う作品」は美的側面と用的側面が共存し,絵画や彫刻などの「見る作品」とは異なる鑑賞指導方法論となる。協力が得られた小学校5 年生と中学校全学年の児童生徒を対象とした団扇の鑑賞調査と中学1 年生を対象とした鑑賞実践の結果を基に,使う作品独自の鑑賞指導方法論を構築した。使う作品である団扇を鑑賞した鑑賞者は,団扇の色や素材等を味覚以外の感覚を使って感受し,複数の感受内容を鑑賞者自身が持つ団扇の概念に合わせて組み合わせ作品評価を行う。鑑賞指導としては,さらに団扇を使った作品世界を想像する活動を行う。この想像世界は使う作品の美的側面と用的側面が融合した美的世界であり,作品の美的価値を味わう世界である。
  • -低学年の事例に対するコード化による分析を伴う総合的解釈を通して-
    佐藤 絵里子
    2021 年 42 巻 p. 197-211
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学校低学年の「造形遊び」の学習評価を通して,見取りの観点の利点と限界について考察することである。具体的には,新聞紙を用いた2 年生の事例に対して,見取りの観点(=コード)を用いた分析と準エピソード記述という二通りの評価を行い,両者の結果を総合した。分析・考察の結果,見取りの観点には,内容の構成妥当性を担保する機能があることが明らかとなった。それは,教師の視野を広げ,題材の成果や課題,潜在的なよさに気づかせる。一方で,それは「造形遊び」の思想の原点である「子どもの論理」を支えるには不十分である。現象学的方法と並行して,仮定的な構造を示す方策を開発することが必要である。
  • -図画工作科を含む実技教科に求められる教材研究の充実に向けて-
    隅 敦
    2021 年 42 巻 p. 213-229
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,若手教員の実技教科に関する教材研究の聞き取り調査記録を,まず,高久清久が提唱した「教授学的吟味」および,「方法論的吟味」の教材研究の観点から質的分析を行った。次に「客観的吟味としての教材研究」,「主観的吟味としての教材研究」「教育的吟味としての教材研究」の観点から再分析を行い,「客観的吟味としての教材研究」は,教員養成段階で学ぶ内容を基にしていることが確認できた。そして,「主観的吟味としての教材研究」では,児童の実態を踏まえて編集されている教科書会社の指導書の活用が有効である実態を把握した。しかし,「教育的吟味の教材研究」が不十分であり,教員養成段階において,児童の抱える問題に対する教材研究や,ICT機器の有無を問わない教材研究の必要性を教育実習を含めて行っていく必要性が確認できた。
  • -トライアンギュレーションによる人間研究の深化を求めて-
    武田 信吾, 松本 健義, 栗山 誠
    2021 年 42 巻 p. 231-248
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,美術教育学分野での人間研究の深化を図ることを目的として,こどもの造形活動の事例分析において質的にアプローチする際に,意識的にトライアンギュレーションを用いた。具体的には,研究メンバーの 3 者が,理論的な立ち位置の異なる方法論で分析を行うことで,事例を捉える観点に複眼性をもたらした。今回扱った事例は,場所と材料・用具を共有するなかで行われた,幼児ペアによる描画活動である。 2 人が描いた描画空間は画面上で完全に分離しており,表面的にはパラレルに進行しているかのように見える活動内容であった。しかしながら, 3 者の分析を相互に参照することで,画面上の意味や物語性が読み替えられるタイミングが確定し,互いの存在が互いの表現を形作る協同性の在り方について,具体的な論拠をもって明らかにすることができた。
  • -フェルメール作『窓辺で手紙を読む女』の題材実践(中学 2 年生における場合)を通して-
    立原 慶一
    2021 年 42 巻 p. 249-264
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    小論では,同一題材に二つの実践的方法論で取り組む。それを手がかりとして彼らの鑑賞能力をどのように捉え,序列化するべきかについて考察する。新規の第二方法論で鑑賞を始める場合,能力高位者は「モチーフ・情景のあり様」からヘルメレン流美的特性の類型として自然特性を感知した。それが導き手となって「窓からの光がいっぱいでない」など自然特性的な主題を把握し,これのみが味わわれた。 従来の第一方法論では,以下の美的特性が把握された。高位者は造形的特徴から,多様な美的特性を感受した。それが引導役となることによって,「瞬間のすばらしさ」などの趣味特性的主題と,「時の流れのゆったりさ」など行為特性的主題を把握した。中位・低位者は専ら人物の表情と挙措から,「悲しみの心情」という感情特性的主題を感知するに留まった。
  • -現職小学校教師を対象としたアンケート調査から-
    寺元 幸仁
    2021 年 42 巻 p. 265-277
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,教師が考える通知表の影響に焦点化したアンケート調査を実施し,子どもに対する「良い影響」と「良くない影響」について考察を行った。併せて,文章による図工の評価の可能性についても調査・考察を行った。結果, 3 段階評価や評定について教師は,「明解で伝わりやすい」としながらも,「どこを評価されているのかわかりにくい」「記号や数字にとらわれる」等の「良くない影響」の方が多いと考えていることがわかった。また,文章による評価を実施すると仮定した場合,教師は「具体的でわかりやすい」等,「良い影響」の方が多いと考えることがわかったが,「教師の負担増」といった理由から,実施することについては「賛成」する教師が少ないという結論を得た。
  • -「形に対する認識と構成力」の育成に焦点を当てて-
    西村 幸一郎
    2021 年 42 巻 p. 279-290
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,人体彫刻制作を学ぶ者の「形に対する認識と構成力」を育むため,3Dデータを活用した制作方法の有効性について検証することを目的とする。調査方法は,彫刻を学ぶ学生二名による3Dデータを活用した制作過程の記録と,制作後のインタビューから検証する方法を用いた。調査対象者には,機器やソフトウェアについての使用方法を事前に説明し,必要に応じて使用するよう指示した。インタビューによる検証から,3Dデータを活用する方法は,骨組みの設計段階において特に有効であることが明らかとなった。その要因は現実空間では困難な造形処理をディスプレイ上に可視化して記録できるという3Dデータの特質によるものであると推察した。以上から,3Dデータは人体彫刻を学ぶ者の「形に対する認識と構成力」を育むための有効な手段であると結論づけた。
  • -ムナーリの芸術教育に関する日伊研究の概観-
    藤田 寿伸
    2021 年 42 巻 p. 291-301
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    ブルーノ・ムナーリによる子どものための芸術教育について,イタリアと日本における先行研究を調査し,ムナーリの教育観・手法が諸活動の中でどのように形成されたか,内外の研究を参照しながら考察する。本研究では文献調査と関係者への聞き取りにより,ムナーリの教育に関する内容を中心にイタリアと日本において研究がどのように展開されてきたか調査した。イタリアの研究ではムナーリの教育観にデューイ,モンテッソーリの教育哲学の影響と当時の教育改革運動との関連が指摘されており,ムナーリがレッジョ・エミリアの幼児教育やミュージアム教育へ影響を与えた点に論及している。日本ではムナーリの来日ワークショップの継承から,近年はイタリアの後継者たちの活動に注目する研究が生まれており,ムナーリの教育の再評価が期待される。
  • -東京造画館製の教育掛図を中心として-
    牧野 由理
    2021 年 42 巻 p. 303-314
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    島津製作所は明治28(1895)年に島津製作所標本部を設立し,教育掛図などの理科教材を製造・販売していた。教育掛図は教室に掲示された大判の絵図である。本研究では,島津製作所標本部の目録に掲載されている教育掛図を対象とし,題目,画家,制作会社などを検討した。その結果,東京造画館で製作した植物学用の教育掛図を,島津製作所標本部で販売していたことが判明した。さらに現存する教育掛図を分析したところ,魚類を描いた伊藤熊太郎の原図による教育掛図を含め,東京造画館の理科教育に関する教育掛図を数多く販売していたことが明らかとなった。細部まで緻密に描かれた理科教育に関わる教育掛図は,子どもたちにとって視覚イメージを喚起する教具となっていたことが示唆された。
  • -ゲーヒガンの批評学習モデルを援用した高等学校における実践を踏まえて-
    南 洋平
    2021 年 42 巻 p. 315-330
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本論の目的は,作品の知識情報を活用した鑑賞学習モデルの研究である。ゲーヒガン(George Geahigan)による,探究をベースとした批評学習モデルに着眼し,高等学校において,同学習モデルを援用した題材の実践と結果の検討を行う。検討の材料には,生徒が筆記した成果物に対するルーブリックを用いた評価,及び5 件法と自由記述によって得られたアンケートの結果を用いる。結果,以下の可能性が確認できた。1 点目,作品に関連する知識情報を深い理解と共に獲得することができる可能性。2 点目,知識情報を活用した新しい作品の解釈を行うことができる可能性。3 点目,美術科教育の学習以外にも活用可能な幅広い資質・能力の獲得に関する可能性。
  • -にじみ絵の実践に着目して-
    吉田 奈穂子
    2021 年 42 巻 p. 331-343
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼児期のヴァルドルフ教育に関する研究の一環である。本稿は,幼児期のヴァルドルフ教育の理論的基盤とNPO法人うめの森ヴァルドルフ子ども園における教育実践を考察することによって,この子ども園における造形活動の特質を明らかにすることを目的とする。  まず,ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861~1925)の思想的基盤と,「サルトジェネシス」研究の観点から再解釈された最新のヴァルドルフ教育の教育指針を検討した。そして,NPO法人うめの森ヴァルドルフ子ども園における実地調査をもとに,特ににじみ絵の実践について考察を行った。考察の結果,この子ども園の造形活動の特質として,子どもの感覚のための物的環境や空間に対する教育的配慮,保育者の子どもに対する首尾一貫した接し方,繰り返しの要素をもつ造形活動の内容の3 つが明らかになった。以上のことから,学校教育の先取りとしてではなく,幼児期独自の姿にアプローチする幼児教育のあり方が示唆された。
  • -Arts-Based Researchの考え方を取り入れたワークショップ実践を踏まえて-
    廖 曦彤
    2021 年 42 巻 p. 345-359
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は美術のワークショップ実践者に対する支援のあり方を探るために,近年の美術教育研究の国際的な動向の中で注目されるArts-Based Research(ABR)に着目した。 本研究の目的は,ABRとワークショップの特徴を比較し,筆者のワークショップ実践を通して,ABRの考え方を取り入れることによってもたらされた可能性を検討することである。  筆者の実践の「フィールドノーツ」をオープンコーディングで分析し,これまでの実践経験と比較し,ABRが筆者の実践にもたらした変容とワークショップにもたらす可能性を考察した。 検討の結果,ワークショップ実践にABRを取り入れることによって,筆者の探求に対する意識が高まり,これまで実践してきた探求を意識していないワークショップより,さらにオープンエンドな,開かれたワークショップ活動の可能性が見出された。
  • -中国の中学生を対象として-
    劉 栓栓
    2021 年 42 巻 p. 361-377
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本稿は,中国の中学生の美術鑑賞における省察的学習を促す授業案の提案と,その実践的効果の現地調査による検証を目的とする。この授業案は,生徒の①グループ内の他人の視点,② 美術史の視点,③創作者の視点という3 つの外的視点を取得する意識を高める3 つの手段を通して生徒の省察能力を高めようとする。現地調査の結果として,まず,調査票で測った生徒の授業前と授業後の省察能力得点に対するt 検定により,生徒の省察能力がこの授業を通して有意に向上した。また,相関分析の結果は,視点①と②を取得する意識の変化が省察能力の変化の一因であるとの仮説を支持する。さらに,生徒の鑑賞文と作品創作ワークシートに対する事例分析により,本授業案が上述した三視点を取得する意識を高めることで美術鑑賞での省察能力を向上させることを確認した。
  • 2021 年 42 巻 p. 380-381
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 382-384
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 385-386
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 387-389
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 390-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 391-392
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 393-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. 394-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
  • 2021 年 42 巻 p. App2-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/11/01
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