2022 年 43 巻 p. 247-261
本研究は美術のワークショップ実践者の中で熟達者がもつ経験や意識といった「実践知」の内容と熟達に影響する要因を明らかにすることを目的として,研究協力者合計10名に対して半構造化インタビューを実施した。質的分析法M-GTAを用いてインタビューデータを分析した結果,美術のワークショップにおける実践知には【技術・スキルの側面】と【態度・意識の側面】が示唆された。前者では〈材料準備の工夫とリクエストの対応〉などの4項目,後者では〈逸脱の受容と自由の尊重〉などの3項目が抽出された。熟達に影響する要因について【多様なワークショップ実践を通じた現場経験の蓄積】,【他者からの影響と価値観の拡がり】,【自己やワークショップに対する省察】という三つのカテゴリーが見出された。