2022 年 43 巻 p. 263-278
本研究の背景は,戦時体制下の物資統制を受けた材料入手が困難な中,初等教育課程の工作教材の義務教育化へ向けた当時の関係教員らの動向にある。特に日華事変以降の昭和13年から昭和15年の国民学校の教則案が成立していく期間を対象として,工作教材に関わる教員講習会を担当した日本手工研究会に焦点をあて,文部省への対応と教材開発について考察した。本研究の結果,同会における専門委員の発足後,節約の道徳から一歩進めた手工科特有の物の利用への観念が廃物利用の教材観にあらわれていたことが分かった。また,昭和15年 3 月の作業科手工の講習会における模型飛行機教材の必要材料の規定を基に,同省への材料配給機構の設置を求める対応策がみられた。