主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 120-
【目的】鰹節製造の際、原料にブライン凍結1級品(B1凍結品)を用いると製品がオレンジ色に変色する現象(オレンジミート)が問題となる。この原因は、B1凍結品を解凍する際に解糖系で生成するグルコース6リン酸(G6P)やフルクトース6リン酸(F6P)が鰹に含まれるイミダゾール関連化合物等とメイラード反応を起こすためと考えられる。本研究は、解凍条件の工夫によって鰹節のオレンジミートを抑制することを目的とし、魚肉中心温度を想定したモデル実験においてB1凍結品を解凍する際にG6PやF6Pを蓄積させない条件を検討した。さらに、見出した条件で鰹節を製造し、オレンジミートの有無を検証した。
【方法】実験に用いる鰹原料は枕崎市漁業協同組合より入手した。モデル実験では凍結状態の鰹を切り出して個別真空包装したものを用いた。ラウンド魚は研究室に搬入後、所定の条件で解凍し、通常の製造法に準じて鰹節を製造した。核酸関連物質はHPLC法で定量した。G6P、F6Pおよび乳酸は酵素サイクリング法で定量した。
【結果】B1凍結品を様々な条件で解凍した際の糖リン酸と乳酸の含有量を定量し比較した。B1凍結品では解凍後水氷処理1時間後に糖リン酸の含有量が顕著に増加し、その後水氷中で1日処理するとG6Pはオレンジミートにならないレベルにまで低下した。また、乳酸値は保存時間の経過に伴い増加した。以上より、B1凍結品を中心温度が0℃付近となるまですばやく解凍したのちに水氷中で1日保持することにより、解凍系の代謝を十分に進行させることができ、糖リン酸の蓄積を抑制することでオレンジミートを防げる可能性が示唆された。また、その際にイノシン酸量は通常の鰹節製造に用いる原料よりも高く、乳酸量は低く抑えられることが示唆された。上述の条件でB1凍結品のラウンド原料を解凍して荒節を製造したところ、オレンジミートとならなかった。