日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
会議情報

[2Ip] 水産物、フードシステム、6次産業化、その他の食品
タンニンによる魚醤油中のヒスタミン除去
*榎本 俊樹東 怜奈滝井 悠莉小栁 喬滝埜 昌彦笹木 哲也道畠 俊英
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 119-

詳細
抄録

【目的】魚醤油は,生の魚を塩で漬け込み発酵させた液体調味料であり,わが国を含め,アジアの多くの国で生産されている.魚醤油のヒスタミン濃度は,CODEXの基準において400 ppm未満と定められているため,ヒスタミン濃度の管理は重要となる.これまでの研究で,タンニン酸と陽イオン交換樹脂の併用処理が魚醤油のヒスタミン除去に有効であることを報告した.本発表では,タンニン酸よりも安価で入手しやすいタンニンのみを用いて同様の検討を行い,ヒスタミン除去の低コスト化と簡易化を目指した. 

【方法】魚醤油は日本産,タイ産,ベトナム産などの36種類を使用した.タンニンはミモザ,タラ,チェストナッツ,柿,ケブラチョの5種類を用いた.ヒスタミンの測定は,チェックカラーヒスタミン(キッコーマン)を使用した.

【結果】魚醤油中のヒスタミン濃度を測定した結果,魚醤油に15.0~437 ppmのヒスタミンが含まれていた.36種類の魚醤油からヒスタミン濃度の高い13種類を抜粋し,タンニンによるヒスタミン除去を行った結果,魚醤油やタンニンの種類によって差はあるものの,30~60%程度のヒスタミンを除去することができた.特に,タラ,ケブラチョ由来のタンニンは,ヒスタミン除去率が高かった.また,タンニン処理をした魚醤油と処理前のそれについてアミノ酸分析を行った結果,両者にほとんど差が認められなかった.したがって、タンニン処理は魚醤油の呈味成分に影響を及ぼさないことが示唆された.これらの結果から,タンニン処理は,魚醤油のヒスタミンを大幅に低減化することができ,また,呈味成分も維持されるため,タンニン酸と陽イオン交換樹脂同様にヒスタミン除去に有効であることが示された.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top