主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 165-
【目的】オレオフォームは,オレオゲル中のゲル化剤が形成する結晶ネットワークに空気を取り込ませた泡である.乳化剤不使用でソフトな感触を持つため,食品,化粧品などへの応用が期待されている.オレオフォームを製品化するには泡の構造を長く保つものを開発しなければならないが,安定性の高いオレオフォームの作製は難しいものとなっている.松尾らはこれまで,ゲル化剤としてトリベヘニン(BBB)を用いることで,大量の気泡を抱き込むオレオフォームの作製が可能であることを明らかにしている1)が,安定なオレオフォームの作製は未だ達成されていない.オレオフォームは気泡のまわりに結晶を吸着(ピッカリング)させることで泡の構造を保っているため,オレオフォームの安定性において,吸着する結晶の完全性が重要であると考えられる.そこで,本研究では冷却速度や結晶化温度といった結晶化条件に着目し,結晶性の高いBBBの育成条件の探索を行った.
【方法】オリーブ油にBBBを試料全量に対して10 wt%加えたものを約80 ℃で加熱することで完全に溶かし,結晶化条件を変化させてBBBのα型の結晶を晶出させた.その後試料を昇温し,BBBのβ型に多形転移させることで,オレオゲルを作製した.その際,放射光時分割X線回折測定を行うことで,BBBの結晶化挙動の観察を行った.
【結果】放射光時分割X線回折測定を行うことで,BBBのα型からβ型への多形転移の様子を捉えることができた.また,BBBのβ型の回折プロファイルを解析した結果,冷却速度が速い方が完全性の高いBBBのβ型の結晶を育成できることが分かった.発表当日は,異なる結晶化条件におけるBBBのα型の完全性の違いや,α型の完全性が,β型への多形転移やβ型の完全性に及ぼす影響について報告する.
1) Kazuki Matsuo et al., JOS, 72, 819, (2023).