日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
会議情報

[3Aa] フレーバー物質,色素
亜臨界水抽出時のアントシアニンの安定化機構および発色の温度依存性の解明
*新名 世実園田 素啓高井 雄一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 195-

詳細
抄録

【目的】

通常,アントシアニンは,中性から弱酸性において不安定であるとされているため,酸性条件下において有機溶媒を用いて抽出されるが,発表者らはアントシアニンの一種であるナスニンを対象に,亜臨界水処理という高温高圧下で安定して抽出できること,さらに,冷凍すると発色が回復することを見出した.本研究では,亜臨界水処理時のナスニンの安定化機構と,その発色の温度依存性の解明を目的とし,これらの現象に寄与すると考えられるナスニンの会合体形成について検証した.

【方法】

吸光度測定によりナスニン水溶液の吸光度スペクトルのモル濃度依存性を調べた.さらに会合体の形成を確認するため,円偏光二色性(CD)測定,および核磁気共鳴(NMR)測定を行った.また,会合形成と発色の温度依存性との関係について検証するため,分光光度計の測定温度を25℃,10℃,5℃,0℃と変化させ,ナスニン亜臨界水抽出液の吸光度を測定した.

【結果】

ナスニン水溶液の濃度が5×10-3 Mのときの吸光度がランベルトベールの法則に従わなかったことから,一定の濃度以上では,分子の構造が変化するものと推測された.さらに,CD測定において,濃度が10-3 M以上のとき,コットン効果を示すことが確認されたことから,ナスニン水溶液が高濃度のときに会合体を形成する可能性が示された.同時に,NMR測定により線幅の広がりが確認されたことも会合形成を支持していると考えられた.また,発色の温度依存性について,亜臨界水抽出液の吸光度を0℃から25℃の範囲で測定した結果,0℃のときの吸収極大波長(538 nm)での吸光度は,25℃の吸光度と比較して約1.2倍高くなることが確認された.

著者関連情報
© 2024 公益社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top