日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[3Ba] 生理活性物質
溶解度分別法を利用したグリチルリチン精製法の開発
*本夛 崚資西野 蛍汰福田 悠作三輪 彦輝片野 肇高橋 正和
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p. 219-

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抄録

【目的】グリチルリチン(GL)は甘草(Glycyrrhiza glabra)の根に含まれ,抗炎症作用や抗ウイルス作用など多様な生理活性を示し,漢方薬成分として利用価値が高い.また本化合物はトリテルペノイドサポニンであり,グルクロン酸残基を2残基含む配糖体である.我々はこれまでにホウ砂水溶液を用いて大豆全粒粉末のメタノール抽出物から簡便にB型大豆サポニンを精製する手法を開発しており,カラム精製前の前処理法として極めて有用である(Anal. Sci.,2019).この手法はサポニンの糖鎖に含まれるcis-diol構造を利用しており,類似構造を有する配糖体,GLの簡便精製手法の開発にも応用できると期待された

【方法】甘草粉末のメタノール抽出物(画分A)やアンモニア水抽出物(画分Ⅰ)から得られた精製標品について,逆相HPLC解析でGL量を求め,精製回収率を算出した.純度はGL量を乾燥重量で割って求めた.

【結果】GLは水への溶解性は低いが,ホウ砂水溶液には容易に溶解し,さらに酸性にすると再沈殿する.この性質を利用して画分A(GL純度8.5%)をホウ砂水溶液と希塩酸で処理したところ,高極性不純物が除かれて画分B(純度31%,回収率94%)が得られた.次に画分Bに含まれる低極性不純物を除去するため,Sep-Pak C18固相抽出にて画分C(純度40%,回収率35%)を得たのち,逆相分取HPLCにて画分D(純度>90%,回収率10%)を取得した.しかし固相抽出やカラム精製は回収率を低下させるため,甘草粉末の抽出段階で低極性不純物を減らすべく,アンモニア水抽出物(画分Ⅰ;純度6.7%)の調製を検討した.画分Ⅰには低極性不純物が少なく,画分Ⅰをホウ砂水溶液と希塩酸で処理することで,最終的に高極性不純物が除去された画分Ⅱ(純度70%,回収率70%)を簡便に得ることに成功した.

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