【目的】
製茶時の副産物である茶渋は,葉打機・粗揉機に付着する茶葉由来の固形物で,静岡県内の10 ha以上の茶園をもつ工場から1日約100~500 kg発生すると推定される.一方,この茶渋の多くは,廃棄され未利用であるため,茶生産者から有効活用が望まれている.
本研究は,茶渋の食品素材としての有用性解明を目指し,静岡県内の6茶工場から回収した茶渋を用いて,茶の呈味に関わるアミノ酸類の含量,多彩な健康増進効果を有すカテキン類・没食子酸・アスコルビン酸の含量と抗酸化能の特性を評価した.
【方法】
評価では,2023年の5月に静岡県内の茶工場から回収した8種類の茶渋(一番茶)を供した.また,これらの内,4種が普通煎茶の製造由来,3種がペットボトルドリンク用の原料茶の製造由来,1種がかぶせ茶製造由来の茶渋である.
茶渋は,凍結乾燥させた後,ミキサーで粉砕処理し,分析試料とした.各試料中の7種のアミノ酸類・8種のカテキン類の含量は,HPLC法で評価した.また,アスコルビン酸は比色法,抗酸化能は2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)法・親水性酸素ラジカル吸収能(H-ORAC)法で評価した.
【結果】
普通煎茶・かぶせ茶由来の茶渋のテアニン・アルギニン等のアミノ酸類の含量は,上級煎茶の文献値と同等以上であった.また,全ての茶渋の遊離型カテキン類・没食子酸・アスコルビン酸の含量は,文献値より多かった.特に,没食子酸は,普通煎茶・かぶせ茶由来のものが約5~7倍多かった.一方,全ての茶渋の4種のエステル型カテキンの含量は,文献値より少なかった.
茶渋のH-ORAC値は,茶工場によっては煎茶の文献値と同等であった.また,H-ORAC値は総カテキンや4種の遊離型カテキンの含量との間に有意な正の相関が認められた.一方,茶渋のDPPH値は,かぶせ茶由来を除き,文献値と同等以上であった.