主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 277-
[目的]
麴菌は清酒, 醤油, 味噌, 甘酒などの製造に用いられており, 日本の食文化において不可欠な微生物である. 発酵過程で麴菌が生産する種々の酵素や代謝産物は, 発酵食品に独特の味や香りを付加するだけでなく, 様々な健康効果を付与することが近年明らかになってきている. しかし, 発酵食品の健康効果に関する具体的なメカニズムについては, 十分に解明されているわけでない. 本研究では, 甘酒に含まれるプレバイオティクス成分と考えられているイソマルトースの摂取が宿主の腸内環境に及ぼす影響を解析した.
[方法]
6 週齢の雄 ICR マウスに 14 日間, イソマルトースを毎日経口投与した後, 糞便を回収し, 腸内細菌叢に及ぼす影響を解析した. 菌叢解析には 16S rDNA (V1 – V2) アンプリコンシーケンス法を用いた. また, 回収したマウスの糞便を, イソマルトースを唯一の炭素源にした最少培地に塗布し, 37℃ で嫌気的に 24 時間培養した.
[結果]
イソマルトースを投与しない場合と比べ, 投与をした場合, 腸内細菌叢に占める Lactobacillus reuteri の割合が 1.7 倍増加した. また, イソマルトースを唯一の炭素源にした最少培地でマウス糞便中の微生物を分離したところ L. reuteri が単離されたことから, L. reuteri はイソマルトースを資化することが示された. 本研究から, ヒトにおいても甘酒を継続的に摂取することで, 腸内細菌叢に占める Lactobacillus 属細菌の割合を増加できることが示唆された.