主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 293-
【目的】
現在、国内では急激な高齢化が進み,加齢に伴い現れる様々な症状に対する予防対策への関心が高まっている.その一つに機能性成分の食品利用が挙げられる.米ぬかは米を精製した際に得られる副産物であり,様々な機能性成分が含まれている.フェルラ酸はアルツハイマー型認知症予防効果が動物試験レベルで報告されており,認知機能改善サプリメントの成分の一つとして利用されている.しかし,フェルラ酸単独での認知症予防効果に関する知見は乏しい.一方,イノシトールは真皮繊維芽細胞においてコラーゲンやヒアルロン酸増加効果が報告されている.コラーゲンやヒアルロン酸は軟骨の主要構成成分でもあり,イノシトールにこれらの成分を増加させる効果があれば関節改善効果が期待される.本発表では弊社米ぬか由来フェルラ酸,及びイノシトールによる加齢に伴う症状に対する予防効果をin vitro及びヒト試験で検証した.
【方法】
1.軟骨前駆細胞ATDC5にイノシトールを24時間添加した際の細胞増殖率をCCK8にて解析した.
2.ATDC5の分化処理と同時にイノシトール処理を行った.軟骨形成に関わる因子であるCOL2, Aggrecan, HAS2それぞれの遺伝子発現量をリアルタイムPCR法にて解析した.
3.健常成人8名を対象に,フェルラ酸またはプラセボカプセルを朝,晩150mgずつ合計300mg毎日摂取してもらい,これを27日間継続した.試験前後に認知機能検査テストcognitraxを受けてもらい,スコアを比較した.
【結果】
1.イノシトール0.01%添加により,ATDC5の有意な細胞増殖が確認された.
2.イノシトール1%添加により分化処理後4日目のATDC5においてCOL2、Aggrecanの発現量が増加した.
3.認知機能スコアはフェルラ酸摂取前後で,総合記憶力,視覚記憶力,実行機能の認知機能領域において改善傾向がみられた.