日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[3Ha] 穀物、豆、イモ
小麦生地調製時の揮発性成分生成に対する還元性の水溶性成分の影響
*成澤 朋之仲島 日出男朝倉 富子
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p. 328-

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抄録

【目的】これまでに我々は,麺の加工工程において小麦粉への加水時に揮発性成分の多くが生成されると報告してきた.これらはリポキシゲナーゼ(LOX)による不飽和脂肪酸の酸化反応に起因することが推測された.このLOX活性は「農林61号」にて高く,その代謝産物であるアルデヒド類の生成が農林61号で顕著であり,麺にした際の独特な風味の形成要因である考えられた.さらに,小麦粉中にはルテインやビタミンEなどの脂溶性抗酸化成分が含まれているが,揮発性成分の生成が少ないさとのそらではルテイン含有量が多く,揮発性成分生成に対し抑制的に作用することが示唆された1).一方,小麦粉中には水溶性の抗酸化物質の存在も推測されるが,その影響については未解明である.そこで,小麦粉および生地中の水溶性化合物を網羅的に解析し,揮発性成分生成との相関を検討した.

【方法】農林61号とさとのそらの2品種について,小麦粉および生地中の水溶性化合物分析をキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析装置を用いて実施した.

【結果】検出された化合物の面積値を主成分分析に供した結果,還元型グルタチオンなどのチオール化合物が小麦粉において特徴的であった.このグルタチオンは,小麦粉から生地を調製した際に半分以下に減少していた.また,小麦粉中のグルタチオン,および生地で生成するグルタチオン二量体やグルタチオン-システイン重合体はさとのそらで多かった.一方,揮発性成分生成に関しては農林61号においてLOX代謝物であるアルデヒド類が多く,さとのそらでは少ないことが確認されている1).このことから,脂溶性抗酸化成分であるルテインだけでなく,還元性の水溶性成分も揮発性成分生成に対して抑制的に影響する可能性が示唆された.

1) Narisawa et al., (2024) Food Chemistry 443, 138566.

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