主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 345-
【目的】ニワトリChiオボトランスフェリンOTrfは卵白中最も加熱感受性が高い主要成分で,金属イオンが配位することにより加熱安定性が変化することが知られている.以前,Chi OTrfと他の5種の家禽;アヒルDuk,ホロホロチョウGui,ウズラJpq,ダチョウOst,シチメンチョウTkyについて,金属共存時のOTrfの加熱変性温度に関する比較研究を報告したが,今回は,加熱凝集抑制効果について比較解析した.
【方法】加熱凝集・溶解性は,各家禽OTrf溶液(pH 8,pH 9)1 mg/mLについて,Fe3+またはAl3+イオン共存下,30~95℃の実験条件で,加熱時間を変えて溶解性を測定(280 nm)し家禽間で比較した.各家禽OTrfの加熱凝集に関与する分子間相互作用は,加熱後の凝集物または溶液をSDS-PAGE分析にて比較解析した.
【結果】加熱凝集・溶解性は,Fe3+イオン共存OTrfでは,Fe3+フリーOTrfよりどの家禽でも凝集・不溶化が進みにくく,95℃,20分の加熱でも,16~70%可溶性が向上しており,加熱凝集抑制効果が認められた.また,Fe3+イオン共存時の加熱変性温度の上昇効果はどの家禽でも20℃以上と家禽間で差がないのとは対照的に,加熱凝集抑制効果には家禽間で差がみられた.とくにpH 9(95℃,20分加熱)のGui及びTky OTrfはFe3+フリーのときと比べて,約70%溶解性が向上しており顕著な加熱凝集抑制効果を示した.pH 9(95℃,20分加熱)におけるAl3+イオン共存下では,Gui及びTky OTrfがAl3+フリーのときと比べて30~40%溶解性が向上し,Fe3+イオン同様に,加熱凝集抑制効果が認められた.なお,各家禽OTrfの加熱凝集物及び加熱後溶液中のOTrfポリマーの形成には,共に疎水結合に加えて分子間S-S結合が関与していることがわかった.