【目的】グルテンフリーパンの品質向上を目的とし,エステル化度や原料由来の異なるペクチンを添加して,製パン性及び保存性に与える影響を検討した.
【方法】グルテンフリーパンは米粉と小麦デンプンにドライイースト,グラニュー糖,食塩,米油,ペクチンを添加して調製し,5℃,相対湿度64%で2日間保存した.ペクチンはリンゴ由来のエステル化度23,34,38%の低メトキシル(LM)ペクチン,61%の高メトキシル(HM)ペクチンとシトラス由来のエステル化度61%のHMペクチンを使用した.生地の品質として粘度,発酵中の体積,パンの品質としてきめ,比容積,水分含量,水分活性,静的粘弾性,破断特性,テクスチャー特性を測定し,さらに評点法による官能評価を実施した.併せて,X線回折法により老化特性を評価した.
【結果】小麦デンプンパンにおいて,HMペクチンを添加した生地は発酵による膨張率が大きくなり,焼成後のパンはペクチン無添加のパンと比較してきめが細かくなった.米粉パン,小麦デンプンパンにおいて,破断特性のみかけの弾性率,テクスチャー特性の硬さはペクチンを添加することにより低値となったが,エステル化度や由来による違いはほとんど認められなかった.官能評価では,HMペクチンを添加したパンはペクチン無添加のパンと比較しやわらかいと評価され,エステル化度23%のLMペクチンを添加したパンはペクチン無添加のパン,HMペクチンを添加したパンと比較しきめが粗いと評価された.老化特性については,ペクチンのエステル化度や由来による差は認められなかった.以上の結果から,グルテンフリーパンにHMペクチンを添加すると,きめが細かく,主観的にはやわらかいパンになるが,客観的評価法による硬さや老化特性においては,添加するペクチンのエステル化度や由来による影響はほとんどないことが示された.