日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[3Lp] 食品物性
高電界パルスを用いた生体組織内物質流動性制御と食品加工への応用
*萩元 清平
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p. 412-

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抄録

目的高電界パルス(PEF)は,細胞や組織の細胞膜を物理的かつ非加熱的に破壊する作用を有し,PEF処理後の破壊された細胞膜を通過する物質輸送が生じる(易透化).易透化現象は,PEFの因子(電界強度,パルス幅、印加回数)や処理対象に依存することが知られるが,PEF因子と細胞膜の状態や抽出物質の特性との関係を系統的に調べた研究はない.特に,これまでの食品加工の研究ではナノ秒パルスを使用した例は少なく,従来の条件では得られなかった細胞膜間における物質移動制御を農作物に与えられる可能性がある.その有意性を述べるためには,ナノ秒パルスでの検討が不可欠であり,従来のマイクロ秒パルスとの効果を比較する必要がある.本研究では,ジャガイモを対象として,PEF処理した対象の誘電物性,抽出物の特性および脱水速度などを評価軸として,PEF因子依存的なジャガイモ組織への作用と効果を調べることとする. 方法 マイクロ秒パルス電源とナノ秒パルス電源を用い,ジャガイモに対しPEF処理を行った後,真空乾燥器を用いて常圧,80℃で乾燥処理した.また,PEF処理後の試料でのインピーダンスアナライザを用いたインピーダンス解析,HPLCを用いた抽出物解析についての調査を行った. 結果 インピーダンスアナライザによる測定から,ナノ秒PEF印加時にはマイクロ秒PEF印加時と比較し,コンダクタンスGの変化が小さく,キャパシタンスCの変化が大きいという特徴があることが分かった.またHPLC試験による抽出物の成分分析を行った結果,マイクロ秒 PEFで抽出されたサイズの大きな成分がナノ秒PEFでは抽出されておらず,パルス幅により小孔サイズを調整することで細胞組織の物質移動を制御できる可能性を示すことができた.

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