主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 431-
【目的】本研究は農産廃棄物の減量および生産過程におけるCO2排出量の削減を目的としている.出荷されずに収穫残渣となった果実や摘果などを堆肥化することで,その処理費用および焼却に使用する燃料,引いては燃焼により発生するCO2の削減を図る.さらに,収穫残渣の堆肥化過程で発生する発酵熱(堆肥化熱)およびCO2を温室栽培に利用することで,暖房用およびCO2補給のための燃料を削減するシステムを考案した.しかしながら,果実類の堆肥化および堆肥化熱の産業利用は前例が見当たらない.そこで,採算性を含め同堆肥化における基礎的な知見を得るために実験的検討を行った.
【方法】ミカンの収穫残渣を切断・粉砕し,堆肥化副資材と均一に混合してモデル堆肥化原料(試料)とした.縦型密閉堆肥化装置を模した小型(10L)の断熱発酵槽に試料を投入し,密閉して槽の底部から空気を供給した.試料の成分比および空気供給量を種々に変え,6日間試料の温度および質量変化を測定し,主要な排出物として水,CO2およびアンモニアの排出量を求めた.発酵槽出口の排ガス温度から排出熱量を算出し,排ガス中に含まれるCO2の濃度にて有機物の分解量を求めた.
【結果】堆肥化実験における試料の温度挙動はその成分比および供給空気量の影響を受けた.試料の有機物密度が低いことから,最高温度は家畜糞尿の場合よりも顕著に低く約58℃に留まり,堆肥化排ガスの発酵槽出口での最高温度は約55℃であった.発酵槽から排出された排ガスの熱量を算出したところ果実1kgあたり,0.34 MJであった.これは重油8.4 mLに相当する.発酵槽からのCO2の発生量は果実1kg当たり0.12 kgであった.回収されたエネルギー量は大きくないが,排ガス中にアンモニアが検出されなかったことから,堆肥化排ガスを直接温室へ供給することで,暖房およびCO2補給に利用できる可能性がある.