主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 432-
【目的】ヒドロキシ安息香酸類は,食用に適さない植物や農産物残渣(リグニン)等の分解等により得られる.近年,食品加工分野ではカーボンニュートラル・SDGsの観点から,このような食品系未利用バイオマス原料より得られる化合物の高度利用法・有効活用法の開発が重要課題になりつつある.今回,本研究では,ヒドロキシ安息香酸エステルより抗酸化作用が期待される多環性ヒドロキノンモノエーテル類に変換する方法の開発について検討した.
【方法】これまでに当研究室では,含アルコール溶媒において4-ヒドロキシ安息香酸に対して超原子価ヨウ素試薬とヨウ化リチウムを作用させると,芳香環に対するヨウ素化反応と酸化的脱炭酸反応が進行し,ヨウ化キノンモノアセタールが得られることを報告している.本反応では,酸化条件にて4-ヒドロキシ安息香酸のカルボキシ基のイプソ位にアルコールが付加したのちにカルボキシ基の脱炭酸が進行することによりヒドロキノンモノエーテルとなり,直ちに酸化を受けることによりキノンモノアセタール体に変換されたと考えられる.そこで,本反応を4-ヒドロキシ安息香酸エステルに対して適用すれば,イプソ位にアルコールが付加した中間体を得ることが可能になり,この中間体を加水分解すればヒドロキノンモノエーテル体が得られると考え,続く,パラジウム触媒による鈴木-宮浦カップリング反応を行い多環性ヒドロキノンモノエーテル類への変換する手法を試みた.
【結果】4-ヒドロキシ安息香酸エステルに対する酸化反応により目的とする中間体が得られたが,その加水分解体は不安定であった.そこで,中間体に対して加水分解を伴う鈴木-宮浦カップリング反応をおこなったところ多環性ヒドロキノンモノエーテルが得られた.なお,得られた多環性ヒドロキノンモノエーテルは抗酸化能(DPPHラジカル消去活性)を示すことを確認した.