【目的】容易に咀嚼・嚥下できる低水分固体食品が3次元積層造形法により製造できれば,食の選択肢を広げることができる.本研究では,細線ブロックチェック構造のクッキー様食品について,食塊の理化学的特性,舌圧,咬筋・舌骨上筋群の表面筋電位および咽頭部での食塊移動速度と,咀嚼・嚥下容易性との関連性を検討した.【方法】クッキー様食品の調製には一般的な素材を用いた.3次元積層造形自作装置を用い,細線並列要素(W 10×D 9.9 mm)の線方向が互いに直交するように並列(3×3要素)させた層を4層積層した細線ブロックチェック構造(W 30×D 30×H 3 mm)に造形した.正方板状に展延して対照生地にした。水分含量が同等になるようにデッキオーブンにて焼成してクッキー様食品を調製した.クッキー様食品の水分含量を赤外線水分計で測定し,3次元積層構造をデジタルマイクロスコープで観察した.食塊と試料の水分含量の差から唾液吸収率を算出した.2軸感圧型レオメータを用いて等分布荷重を計測し,摩擦力-摺動距離曲線から摩擦特性値を定義した.食塊断片の最大フェレ径,最小フェレ径と粒子数を計測した.舌圧センサーシートで咀嚼・嚥下時の舌圧と中外指数を計測した.専用電極で咬筋および舌骨上筋群の筋電図を取得して最大筋活動電位,筋活動量を計測した.超音波診断装置を用い,咽頭部での食塊流速を超音波パルスドップラ法により計測した.22人のパネルを対象にして,一口で咀嚼・嚥下した際の咀嚼・嚥下容易性を5段階カテゴリ尺度で評価した.【結果】咀嚼の早い段階で食塊にまとまり,舌圧の中外指数からみて食塊にまとまりやすく,咽頭部での食塊流速が最も遅い試料は咀嚼・嚥下容易性が高かった.この試料は本研究での3次元積層構造の中では最も不均一な構造であったため,「構造の不均一さ」が咀嚼・嚥下容易性の向上にとって重要な因子であると思われた.