日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[3Na] 食品物性、嚥下、咀嚼機能
半固形流動食の摂取しやすさに及ぼす物性の影響
*久嶋 智子外山 義雄奈良原 由春加藤 紫辻󠄀本 昌史松田 佐保下柿元 智也
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p. 446-

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抄録

【目的】咀嚼を行わない摂食嚥下の場合,先行期から始まり,①準備期(咀嚼含まず),②口腔期,③咽頭期,④食道期となる.かたさや粘度等の物性値を基準とした規格の関心は,主に②,③であり,食品物性と官能値との関係,あるいは造影剤を含む試験食品の挙動について研究されている.官能値は定量的な評価が難しく,造影剤による評価は食品の変質および日常と異なる環境が課題である.本研究は,日常を模擬した状態において被験者のペースで摂取する様子を,嚥下をモニタリングするGOKURネックバンドにて定量的に評価する.さらに,随意運動である先行期,①,②に注目し,食品物性の違いによる影響を評価する.

【方法】嚥下機能低下をきたす基礎疾患のない75歳以上の健常成人14名(男7人女7人,平均81.57±3.50歳)に対して,粘度(50~100s-1)は同等で,「かたさ」が大きく,まとまりや広がりに関連する指標であるLine Spread Test値(以下、LST値)が小さい食品(P)と,「かたさ」が小さくLST値が大きい食品(Q)を,GOKURIネックバンドを装着した状態で食品1種類につき一口あたり5gを5口連続摂取させた.クロスオーバーデザインで行い5口分の全工程を継続的にモニタリングし,P,Q摂取時の主観評価を行った.

【結果】Pは口に入れてから嚥下直前までの時間(A)が,Qと比較して有意に長かった(p=0.030).一方,一口あたりの嚥下時間,主観評価に有意な差は認めなかった. Aは①,②をあわせた時間である.②は,食品を舌と口蓋によって絞り込むように咽頭へ送り込むことから,比較的大きなずり速度における粘度が高いほど時間を要すると推察されるが,P,Qの粘度は同等である.従って,Aの差は①の差と考えられ,口腔内(舌上)でのまとまりや広がりに関連するLST値およびかたさの差が,Aの時間差に反映されたと推察する.

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