主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】 和牛肉の輸出促進に資するため,真空包装した牛肉を氷温(0℃以下かつ凍結温度以上の温度帯)と低温で保存した場合の細菌の増殖・死滅挙動を確認する.
【方法】 約5㎝×5㎝×2㎝にカットした牛肉を並べて真空包装し,-1℃,4℃および9℃で保存した.標準寒天培地,VRBG寒天培地,CVT寒天培地および0.2%ソルビン酸カリウム添加MRS寒天培地を使用して寒天平板法(混釈およびスパイラルプレーティング)にて30℃2~4日間培養後の細菌数を測定した.生育した菌を同一の寒天培地上で純化したものを顕微鏡観察(グラム染色)および生化学性情試験(ビオメリュー「APIキット」)によって同定した.また検体の一部を10倍重量の蒸留水に入れたもののpHをガラス電極法により測定した.
【結果】 4℃保存と9℃保存では12日目に一般細菌数および乳酸菌数が約6.5 log CFU/gを超え,pHも約5.7から5.1以下まで下がった.一方,-1℃保存では33日間で約3.0 log CFU/gから6.7 log CFU/gまで一般細菌数と乳酸菌数が増加し,pHが約5.1まで下がった.標準寒天培地に発育した菌のほとんどが同一の乳酸球菌であった.MRS寒天培地から分離された菌も乳酸菌であったが前者と異なる形態のものもみられた.真空包装肉を低温保存すると好気性細菌の増殖が抑制されるが,低温増殖性乳酸菌の増殖による品質劣化が生じる可能性もあることが示された.-1℃保存では32日保存後もグラム陰性菌が検出されなかった(定量限界2.2 log CFU/g).4℃保存では12日目に腸内細菌科細菌とグラム陰性低温細菌の菌数が最大(約5.0 log CFU/g)となり,その後,減少した後に32日目に再増加した.9℃保存でも12日目に腸内細菌科細菌とグラム陰性低温細菌の菌数が最大(約4.7 log CFU/g)となり,一度,低下したものの,26日目以降は同じレベルに菌数が戻った.これらの菌はHafnia alvei,Serratia liquefaciens,Pseudomonas putidaおよびPseudomonas luteolaと同定され,大高(1975)などの報告と一致した.これらの菌は低温でも増殖できるが,乳酸菌の増殖に伴うpHの低下により増殖の抑制または死滅が起こる.しかし温度が上がるとこれらの増殖力も強くなるために,このような結果が生じたものと考えられた.