日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
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研究小集会③大豆
豆腐の再考と応用による新しい食品の創出
*有井 康博
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p. 52-

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抄録

【講演者の紹介】

 有井 康博(ありい やすひろ) 武庫川女子大学食物栄養科学部食創造科学科教授.

 略歴:2000年 京都大学大学院農学研究科博士後期課程応用生命科学専攻修了.博士 (農学).京都大学食糧科学研究所研究員,京都薬科大学ポストドクター,理化学研究所播磨研究所協力研究員,青山学院大学理工学部化学・生命科学科助手・助教,武庫川女子大学生活環境学部食物栄養科学科講師・准教授を経て,2020年より現職.主に,豆腐やナタマメに関する基礎研究、応用研究を通じて,食品科学的観点から新しい食品の創出と実用化に挑戦している.

 豆腐は和食文化に欠くことができない食品である.その由来は中国と言われており,アジア各国で豆腐に似た食品が見受けられる.日本での最初の記録は,1183年に書かれた奈良春日大社神主の日記に見ることができる“唐符”とされる.江戸時代中期の江戸で絹ごし豆腐が人気を博し,豆富という表記も使われ始める.現代も主要な食品の一つであるが,豆腐業界の冷え込みは大きい.和食文化の保護には,豆腐の形成を再考し,豆腐やその加工法を用いた新しい食品を創出することが重要と考えている.本演題では,その取り組みに関する基礎研究と応用研究について紹介する.

 豆腐の形成に関する基礎研究は,1950〜90年代に盛んに行われており,多くの科学的知見が報告されている.遅れること20年,豆乳と苦汁を用いて作り分けることができる,“木綿豆腐”と“絹ごし豆腐”の違いについて興味を持ち,豆腐形成の分子機構を再考し始めた.豆腐の形成における化学的要因は,苦汁添加で生じるような二価金属イオンによる塩橋,グルコノデルタラクトン (GDL) 添加で生じるような等電点沈殿とされる.豆腐の形成を追跡する指標は,タンパク質濃度の変化が主であったが,豆腐自体である沈殿の重量変化と尿素可溶性を指標とすることで,新たな気付きが生まれた.これらの指標をもとに,苦汁の主成分であるMgCl2を中心に,異なる陽イオン種や陰イオン種の添加による影響,NaClの添加による影響,GDLの添加との比較などを調べることで,これまでに知られている豆腐の形成機構をより深く考察することができた.

 上述の基礎研究が,豆腐やその加工技術を用いた新しい食品の創出に繋がった.まず,金属イオン種を変えることから,鉄強化豆腐 (特許第5959817号) が生まれた.次に,豆乳にハチミツを加えることで固めた“豆蜂 (トーファン:造語)” (特許第7220889号) が続く.ハチミツに含まれるグルコン酸 (GA) はGDLが開環したものである。そこで,GA濃度を指標に実用化に最適なハチミツを選別し,企業様のご協力のもと,淡路島産百花蜜で豆蜂を開発・販売した.豆蜂の物性は,消費者庁えん下困難者用食品許可基準値内であった.豆蜂を糸口に,様々な食の制限がある人に向けた豆腐プリン (仮称) や豆腐クリーム (仮称) の開発も行った.これらは,卵・牛乳・小麦アレルギー対応スイーツ,ベジタリアン・ヴィーガン対応スイーツ,グルテン不耐症対応スイーツとして利用できる.一方で,豆腐が3Dフードプリンターのインク素材として利用できる可能性を探り,豆腐とデンプンの混合インク (豆腐インク) の開発を試みた.デンプン混合比,インクの物性,印字能,密度,エネルギーバランスの関係を明らかにし,栄養バランスを意識した新たな食品の創出に向けた,豆腐インクの開発第一歩を踏み出した.上述の食品はプラントベースフードであり,食の制限がある人に対応した代替食品として利用できる.演者は社会還元として実用化を積極的に望んでいるので,ご興味ある企業様は是非ともお声がけいただきたい.本研究の一部は,JSPS科研費JP22K02191の助成,公益財団法人日本農芸化学会100周年記念事業第2回農芸化学中小企業産学・産官連携研究助成を受けたものである.

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