論文ID: 2023-003
厳しい経営環境に晒されている企業において、両利き経営はどのように体現され、苦境に陥っていた経営の抜本的な立て直しへと帰結されたのか。本稿では、右肩下がりの市場環境に加えコロナ禍という未曽有の危機に瀕した老舗酒造会社が、公衆衛生事業への進出を果たした事例を取り上げ、ラジカルなイノベーションを生み出す「両利き」を実践するメカニズムを解明することを試みた。ファミリー企業はラジカルなイノベーションにあまり積極的でないとされるが、明利酒類ではコロナ禍まで外部企業に勤務していた創業家次男が企業変革を促し、ファミリー企業によるラジカルなイノベーションを先導したという含意が得られた。