本研究では,医薬品の創薬技術が化学合成技術からバイオテクノロジー技術へと転換したにもかかわらず,大手医薬品企業の研究開発戦略が非転換であった理由を明らかにした。医薬品の研究開発プロセスは研究と開発という2つのプロセスに分割できる。研究プロセスとは,新規化合物(NCEs:New Chemical Entities)あるいは新規生物物質(NBEs:New Biological Entities)を探索するプロセスである。一方の開発プロセスとは,新規化合物あるいは新規生物物質を医薬品へと製品化するプロセスである。創薬技術の転換以前,大手医薬品企業は低分子化合物医薬品の研究開発において,研究プロセスをバイオベンチャー企業へとアウトソーシングするという研究開発戦略を採用していた。その後,創薬技術が化学合成技術からバイオテクノロジー技術へと転換したが,低分子化合物医薬品の開発プロセスにおけるノウハウがそのままバイオ医薬品の開発に転用できたため,大手医薬品企業の研究開発戦略は非転換であったのである。