2016 年 34 巻 2 号 p. 68-81
本研究はセメント練和時の粉液比とサーマルサイクリングが,矯正用レジン添加型グラスアイオノマーセメントの エナメル質への接着強さに及ぼす影響について検討を行った.実験には市販矯正用化学重合型および光重合型レジン 添加型グラスアイオノマーセメントを用いて,ウシ歯エナメル質に矯正用スタンダードブラケットを接着した. セメ ントはメーカー指定の標準粉液比と標準粉液比に対して粉末を20% 増減させた粉液比を用いた.ブラケット接着後, 24 時間(23℃,95%rh)静置した試料,24 時間静置後にサーマルサイクル試験(2,000 回,5℃-55℃)を行った試料 および37℃水中にサーマルサイクルと同時間(111 時間)浸漬した試料について,せん断接着強さを測定した (n=20).光重合型セメントは,化学重合型セメントよりも有意に大きい平均せん断接着強さを示した.粉液比の変動 が標準から± 20% の範囲内であれば,光重合型グラスアイオノマーセメントの平均せん断接着強さは, サーマルサイ クルに影響を受けなかった.平均接着強さ及びワイブル分析より光重合型セメントは,化学重合型セメントより,安 定した接着強さを示すことが推測された.