2003 年 21 巻 2 号 p. 129-139
セルフエッチングシステムの樹脂含浸層の厚みや性質を詳細に調べるために, 接着界面近傍の観察を走査電子顕微鏡 (SEM) と透過型電子顕微鏡 (TEM) を用いて行った.
未処理ならびに化学処理を観察試料片に施すことで, SEMならびにTEM観察が容易になった.ボンディング材や樹脂含浸層の厚さが1μm以下になると, SEMでは厚みの計測やその内部の構造についての観察が困難であった.一方, TEMでは, セルフエッチングされた象牙質の厚みならびにレジンが拡散した深さを容易に推測することができ, 樹脂含浸層の観察を有効に行うことができた.さらに, セルフエッチングボンディング材を塗布したままで放置すると脱灰されたスミヤー残渣がセルフエッチングボンディング材に取り込まれ, 接着に悪い影響をもたらすことがわかった.
今回の検討結果より, セルフエッチングボンディング材を適用した際にはエアブローを行って, 浮き上がったスミヤー層を吹き飛ばして除去すべきであると判断した.