抄録
粒子充填複合材料における粒子の表面にシランカップリング剤を多分子層被覆させた効果について検討した。粒子のモデルとして平均粒子径が50μmのガラスビーズを用い,シランカップリング剤は有機官能基としてアミノ基とメタクリロキシ基を持つもの,またアルコキシ基の数が2個と3個のものを用いた。シランのイソプロパノール溶液でガラスビーズの湿式処理を行い,平均鎖長が4-6分子の多分子処理層を表面に形成させた。処理層の形態は粒子表面を原子間力顕微鏡で直接観察した。この粒子を延性の高分子であるポリ塩化ビニルに充填し,力学特性を評価した。未処理粒子の添加では降伏強度が低下したが,シランカップリング剤による表面処理でこの低下が抑制された。シランの有機官能基はアミノ基>メタクリロキシ基>未処理の順に改善の効果が高く,アルコキシ基の数は3個より2個の方がより有効であった。しかしながら,破断伸度は降伏強度とは逆に界面の接着性の向上に伴って低下し,破壊エネルギーも低くなった。