抄録
本研究では熱可塑樹脂(ポリプロピレン)短繊維複合材料の疲労損傷に対する応力比の影響を検討した。樹脂とガラス繊維の界面強度増大のためアミノシランカップリング剤を用い,一方,界面強度を低下させるためにウレタンタイプのサイジング剤を用いた。疲労試験は応力比Rを0,-1または∞で行い,疲労中の応力-ひずみの関係と試験片表面温度を測定した。同じ繰返数ではR=∞の疲労強度はR=0より50%も大きく,R=0では温度上昇は他の応力比より大きい。R=∞では複合材料の温度の増大は樹脂と同程度に小さい。それは樹脂と複合材では疲労損傷機構が異なるためである。R=0では疲労中における複合材の温度の増大は繊維の末端付近で大きな引張り応力を受ける樹脂の減衰効 果から生じる。しかし,R=∞では周囲の応力は繊維の座屈のために繊維末端に負荷されない。温度 の増大の影響を除いて,25°Cの一定試験片温度で疲労試験すると,疲労中の温度上昇を制御しなかった場合と比べて疲労寿命は100倍以上増大した。温度が増大する疲労試験では粘性破面が現れたのに対して,25 ℃の疲労試験では脆性破面が観察された。