日本接着学会誌
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研究論文
メタクリル酸の低密度ポリエチレンへのグラフト重合と得られるグラフト共重合体の接着性
永井 大介八尾 隆慶西澤 理落合 文吾遠藤 剛
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2006 年 42 巻 6 号 p. 231-237

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抄録

 本論文では,溶液系での過酸化物や酸素による水素引き抜き反応を利用した低密度ポリエチレン(LDPE)へのメタクリル酸(MA)のグラフト重合と得られたグラフト共重合体のアルミニウム箔に対する接着性を評価した。アルゴン雰囲気下,過酸化物として2,5-ジメチルー2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(BBPOH)を,溶媒として連鎖移動定数の小さいクロロベンゼンを用い,130℃で211時間反応を行うことにより,グラフト化率最大0.91mol%であるグラフト共重合体が得られた。得られたグラフト共重合体をフィルム成形した後,これとアルミニウム箔を200℃,3分間の条件で加圧して多層フィルムを作成し剥離試験を行ったところ,非常に高い接着性を示し,材料の破壊に至るまで剥離が起こらなかった。グラフト化率の接着強度への影響を評価するために低温(175℃),短時間(20秒間)で,より低強度の多層フィルムを作成し,剥離試験を行ったところ,グラフト化率の増加に伴い接着性が向上することが分かった。さらにグラフト共重合体とアルミニウムの接着界面の状態を評価するために,200℃,3分間の条件で作成した多層フィルムを液体窒素中で破断した後,破断面のSEM観察を行った。その結果,グラフト化率0.42mol%のグラフト共重合体は破断時に一部アルミニウムが剥離しているのに対し,グラフト化率0.91mol%のグラフト共重合体は破断後も接着面を維持していることが分かった。このことからも高いグラフト化率を有する共重合体は非常に高い接着性を有することが明らかとなった。

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© 2006 一般社団法人 日本接着学会
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