日本接着学会誌
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研究論文
CTBN/エポキシの成分間予備反応と硬化樹脂の相構造,制振性,接着強さ
岸 肇長尾 厚史小林 友作松田 聡浅見 敏彦村上 惇
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2007 年 43 巻 2 号 p. 50-57

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抄録

カルポキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)を主成分とし,エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル:DGEBA)と反応させた樹脂組成 (CTBN:60wt%) について,CTBNとDGEBA間の予備反応度を制御することにより硬化樹脂の相構造を変化させ,動的粘弾性,制振性およびアルミ接着強さとの関係を検証した。CTBN/DGEBA間の予備反応が軽度な場合,ゴムリッチ連続相,エポキシリッチ分散相からなるミクロ相分離機造が硬化中に形成され,この樹脂を用いた制振鋼板の損失係数(η)には著しい温度・周波数依存性が認められた。一方,同組成にて両成分の予備反応を進めると,成分間の相溶化が進行した。また,予備反応進行に伴い粘弾性評価から見た硬化樹脂のガラス転移領域は拡がり,広い温度・周波数領域にて高制振性を発現する樹脂となることが知られた。高制振性は多様な緩和機構(広い緩和領域)を有する樹脂内部構造がもたらす。また,相溶化進行に伴い,せん断・はく離の両接着強さも向上した。ゴムリッチ連続相にエポキシ成分が組成分配され,共に架橋構造を形成することにより相界面が不明瞭になり,バルク樹脂としての弾性率,強度,破壊エネルギーが向上した結果,高接着強さが得られたと考えられる。

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© 2007 一般社団法人 日本接着学会
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