抄録
本研究では,医療用接着剤の開発を目的として接着強度に対する生体高分子の電荷の影響について検討した。生体高分子には,種々のDS/DD(-COOH/NH2)比を持つカルボキシメチル(CM)化キトサンを用い,このCM-キトサンとクエン酸活性エステル体(CAD)から成る2成分系接着剤について検討した。DS/DDが0.76および0.27の場合は,CAD濃度依存的に接着強度が減少したが,DS/DDが0.52の場合には,5mMで極大値をとりその後減少した。これらの結果から,この接着剤によるコラーゲンケーシング(接着基材)間の接着強度は,基材-接着剤間における二次結合形成が重要であることが示唆された。さらに,DS/DDが0.52のCM-キトサンを用いた場合,臨床で使用されているフィブリン系接着剤と比較して4倍以上の高い強度を示すことが明らかとなった。