抄録
Fowkes式による界面自由エネルギー(γ12)の最小を界面における接着の最適条件とする考え方があるが,Fowkes式に従えばγ12の最小と接着仕事(WA)の増大は一致しないため,妥当性に疑問が残る。そこで検証のため,2種類の粘着テープについて,シクロオレフィンポリマーを含めた非極性被着体に対する剥離接着力を測定し,非極性被着体の表面自由エネルギーの分散力成分(γ2d)に対してプロットした。γ12の最小が界面における接着の最適条件であれば,接着力はγ2dに対し,最適値を有する上に凸の曲線となる筈である。ところが実験の結果,接着力はγ2dに対して上に凸の曲線とはならず,むしろポリエチレンに対する接着力がγ2dの割に(Fowkes式によるWAの割に),特に低いように見えた。以上のことから,Fowkes式によるγ12の最小は,接着の最適条件ではないと考えられる。