抄録
油状成分を多く含み接着が阻害される木材に適応可能な接着剤を開発するため,ケン化度の異なる5種類のPVAを用い,単独系とブレンド系における相構造の観察や動的粘弾性について検討した。単独系,ブレンド系ともにケン化度の低いPVAでは吸湿率は高くなった。また,pMDIの添加によりほとんどのPVAで吸湿率が低く抑えられたが,ケン化度が同程度の場合は単独系よりもブレンド系の方が吸湿率は低かった。SEM観察により完全ケン化と低ケン化度PVAのブレンド系フィルムで海島構造が確認された。また分率の多いPVAが海に,少ないPVAが島領域になる傾向が見られた。ブレンドPVAにはN77とN99の二つのTgが連続して観測され,相分離していることが確認された。また,結晶化度はN99の比率が高いほど高く,pMDI添加系についてもほぼ同様の傾向を示した。ブレンド系PVAの貯蔵弾性率は,Tg以上の温度域では完全ケン化PVAの割合が多いものほど高かった。pMDIを添加した場合,架橋によるゴム状平坦部が現れた。ケン化度の低いPVAの比率が高いブレンド系ほどゴム状平坦部のE'値が高く架橋密度も高い傾向が見られた。