日本接着学会誌
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研究論文
プローブタック試験時の濡れ挙動におよぼす粘着剤の分子構造の影響
嘉流 望野田 昌代藤井 秀司中村 吉伸浦濱 圭彬
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2016 年 52 巻 3 号 p. 59-69

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抄録

粘着剤層厚さが約15~60μmの架橋アクリル酸n-ブチル-アクリル酸ランダム共重合体(A)および架橋アクリル酸2エチルヘキシル-アクリル酸ランダム共重合体(B)について,プローブタック試験の結果から濡れ挙動におよぼす分子構造の影響を考察した。タックの温度依存性から,粘着剤層厚さとともにタックは上昇した。タックは界面の密着性と粘着剤の凝集力に依存するが,粘着剤層厚さの増加はこれらの両方を向上させる。界面の密着性は,さらに物理的濡れと化学的相互作用によるものの2つに分けられることが分った。物理的濡れは接触時間とともに徐々に進行し,その効果はB>Aであった。1Hパルス核磁気共鳴法による20℃の分子運動性がB>Aであったことは,これを支持している。化学的相互作用は比較的短い接触時間で発現し,その効果はA>Bであった。水/トルエン界面の界面張力低下能はA>Bであったことが,これを支持している。粘着剤層厚さの増加は,物理的濡れのみを向上させた。タックの温度依存性で,40℃以下のタックはA>B,40℃以上では逆であった。化学的相互作用は低温,短時間でも発現し,物理的濡れは高温で促進されるためである。

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© 2016 一般社団法人 日本接着学会
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