日本接着学会誌
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技術論文
顔料入り漆膜の色彩に及ぼす硬化条件の影響
沖野 英二郎坂口 聡小川 俊夫大藪 又茂
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2018 年 54 巻 8 号 p. 294-301

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抄録

漆器製造において顔料入り漆が必ずしも顔料の色彩を示さないことが問題となっている。これは漆液がかなり濃い褐色をしているためである。ここでは顔料入り漆膜の硬化条件がその色彩にどのような影響を及ぼすか検討した。漆の硬化には紫外線照射による方法と通常の酵素ラッカーゼによる室温で高湿度下による方法の二つの硬化法について検討した。その結果紫外線( UV) 照射法では後者の方法よりも漆膜が鮮やかな色彩になった。さらに,通常のラッカーゼによる硬化では酸性物質を添加すると鮮やかな色彩になった。一方,塩基性物質を添加すると暗い色彩となった。このことから,通常の漆器製造においては,酸性物質を色漆に添加することが好ましいと結論した。さらに,漆成分の基本構造であるカテコールを高温下で酸化させることによって色彩変化を起こす成分の推定を行った。そして,ガスクロマトグラフィー/ 質量分析法による分析結果はその成分がカテコールの縮合物類であることを示した。

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© 2018 一般社団法人 日本接着学会
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