2019 年 55 巻 4 号 p. 130-142
構造用アクリル系接着剤は,常温で硬化し,多少の油面でも接着可能なことから,注目されている。これらの接着剤を構造物の接着に広く使用するためには,それらの接着剤に接着構造物の強度を予測するための手法を明確にする必要がある。本研究では,アクリル接着剤により接着された重ね合せ接着継手の静的強度を結合力に基づいて推定した。まず,本接着剤で接着されたArcan 型接着継手を用いて,モード1 および2 の荷重下でのアクリル接着剤のcohesive law を,接着層に垂直および接線方向のJ 積分およびき裂先端部の変位を同時に記録することによって求めた。次に,この接着剤により接着された単純重ね合せ接着継手の引張せん断試験を行い,実験的に求められたcohesive law を台形に単純化し,それを用いて有限要素法ソフトABAQUS,ANSYS による継手強度を推定した。その結果,実験よる得られた継手強度は,推定値とよく一致した。