2021 年 57 巻 1 号 p. 4-11
制御/ リビングラジカル重合( CLRP) は,高分子構造の精密設計を可能とする精密重合の一種であり,他の精密重合系に比べて広範なモノマー種をビルディングブロックとして使用できる。さらに,水存在下における重合が可能であるため,様々な機能性微粒子材料を創製できる水媒体不均一系重合への適用が盛んに試みられてきた。その中でも乳化重合は,温和な条件で高固形分に微粒子状ポリマーを得ることができ,工業的にも広く用いられるため,CLRP の適用が望まれているが,ミセル( 粒子)/ 水相/ モノマー滴といった異なる役割を果たす複数の相が存在するが故の複雑性を有する。本論文では,筆者らが一連の研究において獲得した乳化重合系おけるCLRP に関する知見を概説するとともに,乳化重合系の特徴を活かした高分子合成について紹介する。