2021 年 57 巻 1 号 p. 12-18
架橋アクリル酸n-ブチル-アクリル酸ランダムコポリマー( A) と架橋アクリル酸2 エチルヘキシル- アクリル酸ランダムコポリマー( B)の,1H パルス法核磁気共鳴分析( パルスNMR) と動的粘弾性の結果を比較した。動的粘弾性から,ゴム状平坦領域の貯蔵弾性率はA >B であり,架橋剤濃度に依存した。パルスNMR の緩和時間が長緩和時間側へシフトを開始する温度は,ミクロブラウン運動の開始を示した。動的粘弾性の貯蔵弾性率は分子鎖の易動性を示し,パルスNMR はガラス転移温度の違い,つまり分子間力を示すことが分った。0℃以上のタックは,接触時間や架橋剤濃度に依存し,B >A であった。これは動的粘弾性による易動性,つまり濡れ性の違いで説明できた。0℃以下のタックは接触時間や架橋剤濃度の影響が小さく,ガラス転移温度付近における立ち上がりはB の方がより低温で,パルスNMR によるミクロブラウン運動の開始と傾向が一致した。