2021 年 57 巻 4 号 p. 145-151
本研究の目的は X 線マイクロコンピュータ断層撮影( CT) を用いて木質材料中の接着層の形態学的特徴
を非破壊的に観察するための手法を開発することである。針葉樹合板および広葉樹合板をフェノール樹脂
接着剤で,広葉樹集成材を水性高分子-イソシアネート系接着剤でそれぞれ作製した。それらの木質材料
を6 機種のX 線CT 装置に供し,スキャンされたデータを再構成して断層像を得た。針葉樹合板を直径30
mm の視野範囲で撮影した断層像では針葉樹仮道管やその内腔に浸透したフェノール樹脂接着剤を明瞭に
可視化することはできなかったが,針葉樹合板を直径3.6 mm の視野範囲で撮影した断層像では仮道管やそ
れに浸透したフェノール樹脂接着剤を明瞭に可視化することができた。同様に広葉樹合板の直径3.6 mm の
視野範囲による断層像においても,広葉樹道管に入り込んだフェノール樹脂接着剤やそれに入ったクラッ
クを明瞭に可視化することができた。広葉樹集成材の断層像では,ラミナに挟まれた水性高分子-イソシ
アネート系接着剤の接着層だけでなく,接着剤内部に形成された不均一性についても可視化することがで
きた。本研究の手法によりさまざまな木質材料の内部形態を直径数ミリメートルの視野範囲に渡って透視
観察することができるため,例えば木質材料の接着強さに及ぼす形態的特徴の影響の検討など,さまざま
な接着研究への応用が期待される。