2021 年 57 巻 6 号 p. 220-226
内視鏡的粘膜下層剥離術 (Endoscopic submucosal dissection, ESD) は,食道や胃,大腸などにお
ける早期消化管がんを内視鏡によって切除する低侵襲な治療法として注目を集めているが,ESD 後の炎
症反応によって生じる様々な合併症が問題となっている。創傷被覆材を用いることで,創部を外部刺激
から保護することができるが,既存の創傷被覆材は,組織接着性が低い点,分解に伴う炎症が生じる点,
創傷部への送達が難しい点などに課題があった。本研究では,疎水化技術によって生体高分子の分子構
造を制御することで,組織接着性粒子を開発し,ESD 後の創傷被覆材としての応用を行った。ブタまた
はタラ由来のゼラチンを疎水化した疎水化ゼラチンからなる粒子は,消化管組織のような湿潤環境下に
ある組織に対して,高い組織接着性と水中での被覆安定性を示した。また,粒子の表面処理を行うこと
で,止血機能を向上させることもできた。さらに,ミニブタESD モデルにおいては,粒子によって潰瘍
を保護することで,炎症を抑制できることを見出した。本粒子は,内視鏡で容易に創部に送達可能であり,
組織表面を物理的に保護することができるため,消化管がん手術後の瘢痕拘縮や狭窄,穿孔,出血など
の合併症を予防する医療材料として有用であると期待される。