架橋アクリル酸n-ブチル-アクリル酸ランダム共重合体( A) と架橋アクリル酸2エチルヘキシル-AAラン
ダム共重合体( B) のタック特性を,プローブタック試験で比較した。接触時間30 s,20℃測定を基準に,温度( 0
~60℃) と接触時間( 30~1800 s) の影響を検討した。30℃以上と長い接触時間( 1800 s) で,タックはB>A
であった。B は,30℃以上で破壊エネルギーが著しく高くなった。高速マイクロスコープを用いて側面からプ
ローブ/ 粘着剤界面のフィブリル形成と,上面観察からフィブリル形成した領域の広がりを観察した。タック
値を決める試験力-変位カーブのピーク付近のフィブリル長さと,プローブ界面でフィブリルが形成した領域
の大きさはいずれもB > A であった。粘着剤の変形で剥離力を緩和する特性はB > A で,これが高いタック
特性の理由であった。
ビスフェノール F 型エポキシ樹脂のなかで,対称性に優れた 4,4ʼ-置換体( p-BPF-E) が融点 149.7℃の結
晶性硬化物を与えることを見出した。アルミナを充填した系においてp-BPF-E 硬化物の物性を評価した結
果,熱伝導率は 4.1 W/m・K( Al2O3, 90 wt%) と,アモルファス硬化物の約 1.3倍となった。また,p-BPF-E
硬化物は,その結晶性に対応して常温からその融点である150℃付近まで高い熱伝導率を示した。さらに,
結晶性の発現により,154-163℃の熱変形温度を有するとともに,低熱膨張性および低吸水性を示すことが
確認された。
内視鏡的粘膜下層剥離術 (Endoscopic submucosal dissection, ESD) は,食道や胃,大腸などにお
ける早期消化管がんを内視鏡によって切除する低侵襲な治療法として注目を集めているが,ESD 後の炎
症反応によって生じる様々な合併症が問題となっている。創傷被覆材を用いることで,創部を外部刺激
から保護することができるが,既存の創傷被覆材は,組織接着性が低い点,分解に伴う炎症が生じる点,
創傷部への送達が難しい点などに課題があった。本研究では,疎水化技術によって生体高分子の分子構
造を制御することで,組織接着性粒子を開発し,ESD 後の創傷被覆材としての応用を行った。ブタまた
はタラ由来のゼラチンを疎水化した疎水化ゼラチンからなる粒子は,消化管組織のような湿潤環境下に
ある組織に対して,高い組織接着性と水中での被覆安定性を示した。また,粒子の表面処理を行うこと
で,止血機能を向上させることもできた。さらに,ミニブタESD モデルにおいては,粒子によって潰瘍
を保護することで,炎症を抑制できることを見出した。本粒子は,内視鏡で容易に創部に送達可能であり,
組織表面を物理的に保護することができるため,消化管がん手術後の瘢痕拘縮や狭窄,穿孔,出血など
の合併症を予防する医療材料として有用であると期待される。