日本接着学会誌
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膨張黒鉛含有コア-シェルゴム/エポキシ樹脂系易解体性接着剤におけるカーボンナノチューブの分散制御の力学物性に対する影響
福森 健三廣瀬 威仁
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2024 年 60 巻 2 号 p. 25-31

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抄録

本研究では,自動車用マルチマテリアル化部品の代表的な構造接着剤として用いられるエポキシ樹脂とコア-シェルゴム(CSR)から成るベース材料に膨張黒鉛(EG)を配合したエポキシ樹脂系接着剤について,補強性ナノフィラーのカーボンナノチューブ(CNT)の分散状態と系の力学物性との関係を明らかにすることを目的とした。EG のエポキシ系接着剤への配合は,車両廃棄時の解体性を容易にする効果があり,また一方EG とエポキシ樹脂との界面接着性に乏しいため,系の力学物性の大幅低下が懸念される。CNTは,エポキシ樹脂への少量添加により高い補強効果が期待できるが,その補強効果は,CNTの表面コートや結晶性の違いに起因したCNTの分散状態に大きく依存する。得られた実験結果より,EG 含有エポキシ樹脂系接着剤の力学物性向上は,CSRのシェル層と同種のアクリル系ポリマーコート多層(MW)CNTのCSR近傍での独立分散,硬化剤と反応性を有する希釈剤中分散の単層CNTのエポキシ樹脂相への選択的分散,かつMWCNTの約1/9 の添加量などのCNTの分散制御条件を満足することにより達成されることを確認した。

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© 2024 一般社団法人 日本接着学会
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