2021 年 27 巻 1 号 p. 1_134-1_139
日立が主観的なアプローチで人の価値観変化を洞察する活動を始めて10年以上が経過した。2020年、COVID-19や気候危機の切迫した状況により不確実性が高まる中、ひとりひとりが議論を通じてめざしたい将来像を抱くことを促すツールとして「持続可能な社会のきざし」を作成した。人の価値観を対象とした未来洞察と客観的なアプローチによる未来予測との違いが理解されづらい状況を鑑みて、従来のプロセスに加え、未来洞察参画者のコロナ禍での日常的な思いを取り入れる「日々のできごとカード」、参画者以外が未来洞察の成果物の活用法をイメージしやすくするための「きざしの試用」を採用した。「持続可能な社会のきざし」は、将来の生活者による社会システムの捉え方の変化を記したものとなった。また、10年を経た性質の変化として、未来への視野を広げるだけでなく、望ましい未来を意識させるものとなっていることが見受けられた。