障害科学研究
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ADHD児におけるひらがな読みの困難と認知特性との関連
—知能のPASS 理論による検討—
中島 範子岡崎 慎治
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2020 年 44 巻 1 号 p. 65-73

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抄録

本研究ではADHD児の読み速度や正確さとPASS理論との関連について検討した。対象はADHDの診断がある8~12歳児21名であった。DN-CASおよびひらがな音読課題を実施した結果、対象児全体のPASS標準得点平均のうち注意の標準得点が、プランニングと同時処理の標準得点に比べて有意に低かった。読字時間を基準とした比較では読字時間標準群よりも読字時間延長群の方が、同時処理の標準得点が有意に低く、注意の標準得点は低い傾向がみられた。誤読数を基準とした比較では、誤読数標準群よりも誤読多数群の方が、プランニングの標準得点が低い傾向がみられた。さらに、読字時間と誤読数を基準とした4群間比較では、読字時間標準かつ誤読数標準群よりも、読字時間延長かつ誤読多数群の方が、同時処理の標準得点が有意に低かった。以上の結果から、知能のPASS理論を用いた認知特性評価によって、ADHD児が抱える読み困難の状態像と認知特性との関連を把握できる可能性が示唆された。

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