本実践では、自閉スペクトラム症 (ASD) 学生の就労支援で実施される就業体験のための振り返りシートを作成し、課題の達成状況や自己効力の変化、事後インタビューから効果の検証を試みた。ASD学生1名と全8回の就業体験でシートを用いた面談を行い、面談終結後に実践の感想を聞き取った。また、実践前後で進路選択に対する自己効力、一般性セルフ・エフィカシー尺度、進路成熟度尺度に回答を求めた。結果、シートを用いた体験の振り返りを通し3つの尺度すべての得点が上昇した。自己効力の変化には遂行行動の達成や言語的説得が影響し、本人に対する肯定的な振り返りや得意・不得意と不得意に対する対策の話し合いが自己理解の深化に寄与した。またシートの利用により面談内容が構造化・可視化されたことで体験がより円滑に進んだ。今後は学生の認知特性に対するアセスメントを踏まえた効果検証の他、他の発達障害学生への利用拡大に向けた検討が必要である。