2021 年 45 巻 1 号 p. 31-41
本研究では、修学上の困り感があり、心理検査等の受検を希望した大学生65名を対象に、ASD・ADHD特性と学生生活の困りごと質問紙との相関分析から、困りごと質問紙の妥当性を検討した。その結果をふまえ、ASD・ADHD特性や認知能力がどのような修学上の困り感に影響を及ぼすかについても、重回帰分析を用いて検討した。対象者は学生生活の困りごと質問紙・AQ・CAARSに回答した後、WAIS-IVを受けた。分析の結果、困りごと質問紙で測定される困り感は、AQ及びCAARSによるASD・ADHD特性と有意な相関関係が認められたことから、尺度の妥当性が確認された。また、対人関係に関する困り感の主要な背景要因としてASD特性が、注意・集中に関する困り感の主要な背景要因としてADHD特性が示された。その一方で、WAIS-IVで測定される認知能力は修学上の困り感と結びつきが弱いことも確認された。